家庭学習で子供の能力を伸ばすにはどうすればいいのか。共に東京大学出身の中野信子さんと山口真由さんは「親自身が規則正しい生活を実践しながら、子供に『あなたはできる子よ』と刷り込んでいくのがいい」とアドバイスする——。

※本稿は、『プレジデントFamily2020年夏号』の記事を再編集したものです。

信州大学特任准教授の山口真由さん(右)と、脳科学者の中野信子さん(左)
撮影=榎本壯三
信州大学特任准教授の山口真由さん(右)と、脳科学者の中野信子さん(左)

まずは親が「規則正しい生活」を実践

——自宅で過ごす時間が長くなりましたが、子供たちが家庭でやるべきことは何でしょう?

【山口】いちばん大事なのは自律することだと思います。勉強、遊び、睡眠など自分で決めたスケジュールを淡々とこなしていく力を、長いおうち時間で身につけてほしいですね。

【中野】わたしも同感です。学校や塾では時間割が決められていますが、家では時間をどのように使うかは自分次第。だらだらとした時間ばかりにならないよう、生活リズムを整えましょう。

【山口】そのためには、まず親が規則正しい生活を送ることが大事ですね。テレワークが推奨されているので、自宅でお仕事をしている方も多いでしょう。親は机に向かって仕事をしている姿を子供に見せてほしい。周りの人がきちんと過ごしていると、子供も「自分もちゃんとやらなきゃ」と感じるものです。「勉強しなさい」としかるよりずっといい。

【中野】子供自身でスケジュールをつくるのが難しくて、親が導いてやる場合もあるでしょうね。注意してほしいのは、親の満足のために子供の予定を決めないこと。何時間も勉強している姿を見て安心することが目的になっていませんか(笑)。

【山口】そうそう。例えば勉強は午前中に済ませなさいと言われても、集中できる時間は人によって違います。みんなが朝型ではないんです。わたしは夜型で、母には「早く寝なさい」と言われていたけれど、布団をかぶってこっそり勉強していました(笑)。

【中野】実は8割の人は、朝型と夜型のどちらにも修正できるんです。ただし、朝型遺伝子を持った1割と夜型遺伝子を持った1割の子供は、ずっとそのまま。プロ野球でデイゲームとナイトゲームの成績を比較してみたとき、明らかな差のつく選手がいるのはそのせいなんですね。だから、朝型に修正できない子供はしょうがない。本人にとって勉強に集中できる時間が夜なのであれば、信頼してやりましょう。

【山口】スマートフォンやゲームで遊んでいるんじゃないかと、心配してしまう親の気持ちはわかるけどね。

【中野】うんうん、大人だって仕事をさぼるし(笑)。

【山口】本当にそう。ついつい、ネットでいらないことを検索しちゃう。休憩時間もユーチューブで動画を見たり……。ずっとデジタル機器に触れ続けることで、ものすごく疲れてしまうんです。だからわたしは、長い文章はプリントアウトしたものを読む、ネットに接続しない時間をつくる、仕事に集中したいときはスマホを遠ざけるなどの工夫をしています。デジタルネイティブ世代といわれるいまの子供たちにも、そんなプチ・デジタルデトックスをやってみてほしいです。

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