親の言葉が自己肯定感を育む

——ここまでのお話に共通するのは、生活習慣にしろ、読書にしろ、親は子供を管理しすぎないことが大切だということですね。

中野信子さん
中野信子さん(撮影=榎本壯三)

【中野】親は、自分自身の経験に照らし合わせて子供をコントロールしがちですが、親世代が子供だった30年前といまの時代はまったく違う。これからの30年は、さらに大きな変化があるでしょう。それなのに、親の価値観でレールを敷いてしまうと、子供の人生はめちゃくちゃになってしまうんじゃないかな。

【山口】子供があこがれる職業の上位にユーチューバーが入ってくる時代ですが、それを鼻で笑う親は間違っていますよ。だって時代が違うんですから。親が考えないといけないのは、自分の思い込みだけで判断せず、いつの時代にも不変なことを見極め、子供に伝えることではないでしょうか。

【中野】子供の夢や目標を、親が鼻で笑ったり否定したりするのは、絶対にだめですよね。

【山口】そうそう。それから、やっていないことを指摘するより、やったことを認めてやってほしい。たとえうまくやれていなくても「基本的に君はできる子だ」と刷り込み続けてほしい。

【中野】ああ、それはすごく大事! そうした親の言葉が、子供の自己肯定感を育みますからね。

——父親が自宅で過ごす時間も増えていますが、子供との関わり方で何かアドバイスはありますか?

【中野】父親は仕事を通じて、いろいろな人や社会の仕組みを知っていますよね。そうした中から、子供によい影響を与えそうな話をたくさん伝えてやってほしい。わたしが東大を目指すようになったのは、父に東大へ行くことを否定されなかったことが大きいんです。最高の環境でコスパよく勉強できるっていいな、と単純に思ったことをよく覚えています。大人しか教えてやれない経験や知識を子供に伝えてください。

【山口】子供の勉強を見てやるときは、結果だけではなく、プロセスを見守ってやってほしいですね。自分で決められたか、決めたことを守れたかを評価する。もしできていなかったとしても、その結果をすぐにしかるのではなく、まずは、どうしてできなかったのかを考えて。会社で業務を推進する力を家庭でも発揮してください。