「3歳まで母親は子育てに専念したほうがいい」。日本ではそんな“3歳児神話”が根強く信じられている。しかし東京大学経済学部の山口慎太郎教授は、「生後、母親と一緒に過ごした期間の長さは、子どもの将来の進学状況や所得などにはほぼ影響がない。“3歳児神話”には根拠がありません。子育ての常識は文化や世代によって変わります」という——(前編/全2回)。

※本稿は、『プレジデントBaby 0歳からの知育大百科2020』の一部を再編集したものです。

家族のポートレート
写真=iStock.com/kohei_hara
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世界の子育てデータでわかった「家族の幸せ」の真実とウソ

「子どもが小学校に入学する前までは、母親は家にいて子育てに専念したほうがいい」
「赤ちゃんを保育園に預けるのはかわいそう」

そんな話を耳にしたことがある人は多いだろう。母親が仕事に復帰して子どもの育ちに悪い影響があったらどうしようと悩んだり、周囲から指摘され嫌な思いをしたりした人も少なくないはずだ。

それらの説に根拠はあるのかと、世界中のデータ分析の結果を集めて『「家族の幸せ」の経済学』(光文社新書)を書いたのが東京大学教授の山口慎太郎さんだ。

「日本では子育ての情報が溢れる一方で、“3歳児神話”に代表されるように根拠がない情報が幅を利かせていると感じていたのが研究の原点です。思い込みにすぎないことや1人、2人の少ない経験則が独り歩きしているケースが多いと思います」

子育ての常識は文化や世代によって変わり絶対的なものではない

世界中で行われた国勢調査のような大規模な調査や、さらに赤ちゃんから成人まで長期にわたる追跡調査を分析することで、個人の体験談とは比較にならないほどの信頼性の高い結果が得られたと山口さんは話す。

山口さん自身はカナダで子育てをした経験がある。小学生の息子を取り巻く環境だけでも、国による違いを感じたという。日本でも近年は週末に子どもを連れたパパを多く見るが、カナダでは平日の日中でも子連れのパパたちを見かけた。

「子育てというと日本では母親が主役になりがちですが、父親も子どもに影響を与えていることがわかってきました。また、保育園に預けることは前の世代にはかわいそうなことと思っている人もいるかもしれませんが、家族にいい影響があることがわかってきています。子育ての常識は文化や世代によって変わってくるので絶対的なものではないのです」

そもそも他人の経験則が当てはまるとは限らないと山口さんは言う。

「子どものタイプも夫婦それぞれのタイプもさまざまです。つまり、誰にでも当てはまる子育てのアドバイスは医学的なことを除いてあまりないのです。“自分たちが子どもをどう育てたいか”という価値観を大事にするのがいいと思います。その価値観を持ったうえで情報に触れれば、『〜したほうがいい傾向があるけれどもうちはうち』と情報に振り回されずに済むのではないでしょうか」

子育てのオプションを知るのはいいが、うちには合わないと思ったら取り入れない勇気も必要だ。

「気になる情報や悩むことがあるならば根拠の曖昧なものは信じずに、学術研究や統計的データを基にした情報を調べることをおすすめします」

以下、4つの子育てにまつわる「俗説」を検証する。

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