●各論1
3歳まで子どもはママが見るべき?
↓
NO
「3歳児神話」は、2013年の安倍首相の成長戦略スピーチで「3年抱っこし放題」と母親の育休3年制が打ち出されたくらい日本では根強い。
しかし、母親と子が家にいたほうがよいということは本当に正しいことなのだろうか。保育園に預けて母親が働くのは子どもの発達によくないのか?
山口さんが着目したのがドイツの調査。ドイツの研究者は育休の長さが子どもに与える影響に着目し、育休が半年から1年へと延長された前後の子どもたちについて、高校や大学の学歴や大人になってからの就業状況や所得を調べた。データには、行政が持つ教育や社会保険料納付の記録が使われた。
「結果、生後母親と一緒に過ごした期間の長さは、子どもの将来の進学状況や所得、フルタイムの職についているかにはほぼ影響を与えていないことがわかったのです」
さらに、オーストラリア、カナダ、スウェーデン、デンマークにおける調査分析でも同様の結果が出たそうだ。母親が赤ちゃんを保育園などに預けて仕事に復帰することに罪悪感を持つ必要はなさそうだ。
ただし、赤ちゃんの育つ環境は大事だと山口さんは付け加える。
「生まれたばかりの子がどんな人に育てられるかは発達の観点からとても大事です。けれども、これまで考えられていたように母親である必然性はないということです。愛情を注いで適切に育ててくれる人なら、お父さんや祖父母、保育士でもいいのです」
家庭中心に育てることが子の発達に必ずしもいいとはいえない
さらに、3歳まで家庭中心に育てることが子の発達に必ずしもいいとはいえないという調査もある。
山口さんがあげるのはフランスの例。フランスは、1990年代初頭には産後3年間の育休が取れる制度をつくった育休先進国。2人目の出産に至っては、育休中に平均的な月収の約半分の給付金が受け取れる手厚さ! それもあってか、出生率2.0前後を保っている(日本は2018年で1.42)。
「母親が育休を3年取得できるようになった直後に生まれた子どもたちの言語発達が遅れていることがわかりました。5、6歳時点で受ける言語能力試験で、平均以下の点数を取る割合が5%上がってしまったのです」
この原因は、家庭で子どもを育てたために家族以外の人と接する機会が減ったからだと推測できるという。
「保育園に通えばたくさんの子どもや、保育士さんなど親以外の大人と接する機会があります。保育園などに預けず子育てする場合は、子どもがおしゃべりするようになったら、公園などに出かけて家族以外の関わりや交流を持つことを大事にするといいでしょう」