北斎のように生きる、さいとう・たかを

最近は新型コロナウイルスによる外出自粛であまり外に出られていないようですが、よくザボンにいらっしゃるさいとう・たかを先生を見ていると、長生きする理由がしみじみとわかります。

パーティーに同席するさいとう・たかを(83歳)とママ。
パーティーに同席するさいとう・たかを(83歳)とママ。

先生はゴルゴそのままの人柄です。物事を理知的に考えるところなど、先生自身がゴルゴのモデルになったんじゃないかと思うくらいです。

そんな先生ですが、お店に来ると、恋をテーマにした都々逸を唄ってくださることもあります。先生が考えた都々逸にはたとえばこんなものがあります。

 

・下手な言葉で四股踏むよりも サッと内股かけりゃよい
・止めてくれるな もうすぐ岸に着くを分かった舟じゃもの
・泥田から飛び出してみて その蛙己かわずおのが汚れに驚きて見る
・嫌よ嫌よと娘のしぐさ 帯もほどけて身をよじる

さいとう・たかを先生が考えた都々逸(筆はホステス)。
さいとう・たかを先生が考えた都々逸(筆はホステス)。

なんだかいろいろと想像してしまいますよね。こんな色気のある唄を女の子たちのために歌う粋な一面も先生にはあるんですよ。

先生はもう83歳になられますが、いまでもゴルゴ13の連載を続けておられます。先生のお酒の強さったら私でも敵うはずもありませんから、お酒を飲みすぎれば早く死ぬというわけではないと思うんです。長生きの秘訣っていうのは、いつになっても好きな仕事をやっていること。それに尽きます。

葛飾北斎が残した言葉に、「私は90歳で絵の奥義を極め、100歳で神の域に達し、110歳ではひと筆ごとに生命を宿らせることができるはず」というものがあります。作風はもちろん違うのですが、先生は北斎を目指しているのではないかと私は感じるのです。

とにかくもう、漫画を描くことが好きで好きで仕方がないのです。先生は16歳のときにはもうアルバイトで漫画を描いていて、月に5万円(大卒初任給が約1万円)ほどはもらっていたそうです。その当時から、稼いだお金で芸者さんのところへ遊びに行っていたといいますから。

生涯を通して好きな仕事だけで生きていくというのは素晴らしいことです。先生を見ていると、「まだまだ私も糖尿病やコロナになんか負けていられない」と奮い立つんです。そういう気持ちを持ちながら、お酒や盛り場と付き合っていきたいですよね。

(撮影=神尾典行、市来朋久 写真提供=「クラブ 数寄屋橋」、水口素子)
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