柔らかい肌着には着心地以上の効果あり

素材と同様にこだわりたいのが“着心地”だ。職場環境も一日の大半を過ごす重要な場所だが、衣服にいたっては24時間、体に密着している。着心地が自律神経に影響を与えるという研究があるのだ。

九州大学の綿貫茂喜教授がこう話す。

「皮膚への刺激で衣類の硬さ、粗さ、冷たさ、温かさなどの感覚が生じますが、着ている本人が快・不快を自覚しないような小さな刺激でも、体に影響を与えることがわかりました」

綿貫教授らが女子大生に着心地のいい柔らかい肌着と、ごわごわ肌着を着用してもらい、心拍数や皮膚温、深部体温(鼓膜温)、脳の覚醒水準を示す脳波などを測定すると、明らかに違いが出たという。

「ごわごわ肌着を身に着けた人は、着用直後は違和感、不快感があるものの、それは10分もすれば消えてしまう。ですが、ごわごわ肌着を着用していると、体温調節機能や副交感神経活動が抑制され、脳の活動も低下したのです(図3)」(綿貫教授)

さらに幼稚園児にも市販の通常の肌着と、それより柔らかい肌着を2日間着用させて免疫系の検査を行うと、通常の肌着は、柔らかい肌着と比べてストレスホルモンの値が高く、免疫系の活動を抑制することがわかったのだ。

「そのうち慣れてしまうぐらいの小さな刺激であっても、一日中体のかなりの面積がそこにさらされます。柔らかな、自然な肌触りが重要ということですね」(同)

肌触りは柔軟剤でつくられた柔らかさでないほうが望ましい。最近は縫い目が肌に当たらないような縫い方や、品質表示タグをはずして生地にプリントするなどの工夫を施した、肌に優しい肌着も続々と登場している。

また、自律神経は衣類による“圧迫”でも、影響を受ける。信州大学の三野たまき教授によると「チャンピオンベルトを巻くような位置では締めすぎないほうがいい」という。

「胸下からおへそのあたりまでは繊細なゾーンで、自律神経に影響を与えます。ベルトはおへそより下にしましょう。ブラジャーなどの下着も、きついものを一日中身に着けていると月経周期が遅くなるという報告があります。過度に足首を締め付けるストッキングも避けてください。足首は胸下と比べると鈍感な部分ですが、私たちの研究では足首に圧をかけすぎると血流が悪くなり、かえって足先がむくむことがわかっています」

仕事環境やくつろぐ自宅も、そして常に身に着ける肌着も、体へのストレスを減らすことが快適さを生み出す。これからやってくる暑い夏を元気に能率よく乗り切るため、ベストな室温と肌着に気を配りたい。

(写真=PIXTA)
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