安倍首相はここぞというときに黄色のネクタイを締める。一方、アメリカのトランプ大統領は赤色だ。これにはどんな違いがあるのか。印象戦略コンサルタントの乳原佳代氏は「黄色には親近感を持たせ、コミュニケーションを円滑にする心理的な効果がある。しかし、コロナ対応の中でも重要な会見では赤色を選んだほうがよかった」という——。
政治家の印象を左右するネクタイの底知れぬ力
皆さんは、毎朝ネクタイをどのような基準で選ぶのだろうか。今、ステイホームでネクタイを締めない生活を送っている方も多い中、政治家は連日、ネクタイを締めてテレビに映る。
われわれの生活を大きく左右する政治家の一語一句にクリティカルに耳を傾けると同時に、その政治家の表情や服装も視界に入り、ネクタイもその人の印象を左右する。今回は安倍晋三首相が、いかに戦略を立ててネクタイを締めているかを分析してみたい。
たかがネクタイごときが政権に影響を及ぼすのだろうか? 答えはYesである。
われわれは人の顔を見る時、必ず首元が視界に入る。ネクタイもまたしかり。ネクタイの色や形を情報としてインプットする視覚(目)は、非常に精巧な器官であり、瞬時に色や形といった膨大な情報を脳に伝達する。
色には、重さや軽さ、スピード、温度まで感じさせる力がある。また、他の色と組み合わせることで、より心地よく感じたり、不快感をも印象づけることができる。それだけ色には心理的に訴求するパワーがあるのだ。
アメリカではメッセージを効果的に伝えるため、ネクタイをも戦力としてうまく使いこなすのが、ケネディとニクソンが争った1960年の大統領選挙以来、常識となっている。