言葉より饒舌なネクタイと意思を象徴する結び目
ネクタイによって、結んでいる人の心情や過去、例えば、その時の夫婦関係や家族の営み、過去のトラウマやスピリチュアリティまで感じることがある。その人の首に結ばれるまでのドラマこそ深い意味を持つ。
安倍首相がBB社を好むのはアメリカ留学中に薫陶を受けたからか? 昭恵夫人のお見立てか? 行きつけの洋装店は? 同盟国への敬意か?
ネクタイが発するメッセージで想像は掻き立てられ、やがてそのネクタイの主の印象や政治手腕にまでひも付けられる。言い換えれば、ネクタイは言葉より饒舌なのだ。そのネクタイの主の情報が漏洩するとも言える。われわれも服装はリスクマネジメントの一環として捉えるべきである。一国の首相ともなれば、国益を左右するのだから尚更だ。
また、結び方も印象に大きく影響する。安倍首相はよく、結び目が大きい「ウィンザーノット」という結び方を用いている。諸説あるが、本来、欧米の一定以上のクラスのデフォルトはシンプルな「プレーンノット」を用いる。
しかし、ウインザーノットは左右対称かつ奇麗に結びやすい。産霊(むすひ)の国に生きるわれわれ日本人は、大きく整然とまっすぐなものを好む傾向がある。そのため、あえてこの結び方にしているとも考えられる。
ここまで書くと、毎日美しくネクタイにディンプル(えくぼ)を作り、毅然と締めている安倍首相に安堵と希望を見いだす方もいるのではないだろうか。少なくとも危機的状況だからこそ、服装もおろそかにしないでほしい。それは国民をおろそかにしないという強い意志を静かに示すことに他ならないのだから。