「XLサイズ、プラス2センチ」赤を多用するトランプ大統領
トランプ大統領を例に見てみよう。彼のネクタイといえば、鮮やかな赤のイメージが強い。人は赤い色を見た時、そこから連想される炎や戦いのイメージが浮かび、視床下部からの命令でアドレナリンが出てくる。すると、血圧が上がり、瞳孔が開き、発汗が始まり、その度を超すと戦闘態勢となる。
しかも、トランプ大統領のネクタイの長さは、アメリカのエクストララージサイズより、さらに2インチ長い特別サイズである。演説中のオーバーアクションと相まって、その姿はまるで旗をはためかし、民衆を煽動するかのように見えてくる。白人労働者階級の支持を得るのに成功したのも、ネクタイ込みのパフォーマンスがあったからに他ならない。
その一方で、対照的な青いネクタイを着用したこともある。今年3月11日に欧州の入国禁止を発令した時、4月5日にニューヨークでの感染拡大のペースが落ちた時、15日にピークを過ぎたと述べた際には、珍しく青のネクタイを締めていた。
青は、澄んだ空や水を想起させ、人をリラックスした状態へと導く。赤とは逆に、体を休めるホルモンを分泌させ、安心感を与えるのだ。国民に安らぎや安心感を与えると同時に、暴動や買い占めを避けるため、国民を「鎮静化」させる狙いがあったと見られる。
大統領と青いネクタイといえば、オバマ大統領もその恩恵に預かっている。彼が青ネクタイを締めていたのは、リベラルな印象を与えて国民を鎮静化させるためと言われており、最後には見事、ノーベル平和賞を受賞するに至った。
普段は安倍イエローで親しみやすさをアピール
話を安倍首相に戻そう。彼のネクタイといえば、黄色のイメージが強い。安倍首相のものまねをする芸人も黄色いネクタイを締めている。
実は、黄色には親近感を持たせ、人とのコミュニケーションを円滑にする心理的効果がある。私は安倍首相の長期政権に、この黄色ネクタイの効果は欠かせないと思うほどだ。
彼がよく用いる黄色は、色彩心理学的に明るく、気持ちを前向きにわくわくさせる効果がある。オリンピック招致出陣式もこの黄色ネクタイを締め、見事に東京開催を勝ち取った。ザギトワ選手に秋田犬のマサルを贈呈する時やG20大阪で関ジャニ∞と一緒のシーンでも、黄色ネクタイでカジュアル且つ親しみやすい雰囲気づくりに成功した。
また、黄色はゴールドを連想させて気品もあることから、各国首脳会談に選ばれることも多く、海外に広く発信されている。加えて、黄色はメラニン色素が多い日本人になじみやすい色のため、日本人に似合う色と言われている。
我々日本人は、「イエロー」と揶揄されてきた。そこで、かつて「黄禍」と恐れられたプライドとともに黄色ネクタイを締めることで、一定の年齢層や保守層に向けた一種の暗号のような絆を生じさせ、支持を得られているとも考えられる。