職場での足元を冷やさないように心がけよう

しかしここで注意しなければならないことがある。冷気は足元にたまりやすいため、足首の皮膚温が低下しやすく、人によっては集中力などを乱して仕事の能率を落とすことが同研究でわかっている。足し算や引き算などの単純作業では男女ともに能率が落ち、知的な作業では基礎代謝の低い人や女性が低下しやすかった。寒さ対策というと冬を思い浮かべるが、夏も靴下を履くなどして、職場での足元を冷やさないように心がけよう。

職場に限らず自宅でも、人が健康的に快適に暮らせる夏の温度は「25~27度、湿度50%前後」というのが多くの専門家の一致した意見。快適とは自律神経が汗を出させて皮膚表面温度を下げる必要のない温度をいう。

「しかし、年とともにのどが渇いていたり、暑さを感じるなどの生理調節のセンサーや、それを緩和するための発汗反応などの調節機能が鈍くなります。若者がいる部屋と比べて、高齢者がいる部屋の温度は真夏の日中に平均2度高いという報告もある。感覚に頼ると対処を間違えるので、数値を見ましょう」(同)

そして日中のエアコン設定温度は、実は服装によっても変わる。職場でYシャツ、ネクタイ、靴、靴下、長ズボンなら、やはり26度。しかし、自宅で靴下やスリッパなしで薄着なら27~28度でもいいかもしれない。

シャツの下に着る肌着についても、適正温度があることをご存じだろうか。体と衣服の空間を“衣服気候”といい、ここが人の皮膚温である33.6度よりもやや低い「32度前後、湿度50%」だと、衣服を着用して快適といわれる。快適から遠ざかるにつれて不快感が広がり、衣服気候が34度、湿度が80%以上になると発汗が起こる。快適と感じる範囲は意外に狭いのだ(図2)。

衣服気候を快適に保つためには、肌着の素材に気を配りたい。和歌山大学の今村律子教授に話を聞いた。

「大汗をかくようなときは“綿”を避けましょう。綿は汗を吸収する力は強いのですが、それを蒸発させる速度が遅いんです。特に冷房下で汗によって服が濡れていると、人の熱を奪いますし、風邪をひいてしまいます。夏場、特に汗かきな人は吸汗速乾の加工が施してあるポリエステルなどのような合成繊維で作られた衣類がいいと思います。ですが26度くらいの快適な職場で、軽作業(机を移動させたり荷物を運んだりなど)をして汗ばむ程度なら、綿や麻がいいですね」

天然素材の麻、再生繊維(化学繊維)のレーヨンなどには着たときに冷たさを感じる「接触冷感」があるといわれ、こちらも夏向き。

「麻はシャキッとして、衣服と皮膚の間に隙間をつくりやすく、肌にまとわりつかないのがいいですね」(今村教授)