断り方のレパートリーを増やす

エッセンシャル思考の生き方は、ノーを言いつづける生活だ。だから、上手な断り方を何種類も身につけておいたほうがいい。以下に、8つの例を紹介しよう。

1.とりあえず黙る

気まずい沈黙を怖がらず、沈黙を味方につけよう。誰かに何かを頼まれたら、少しだけ黙ってみるのだ。ゆっくり3つ数えて、それから自分の意見を言う。もう少し慣れたら、相手が気まずくなって何か言うまでじっと待ってみよう。

2.代替案を出す

代替案を出して、相手に歩み寄りながら断ろう。先日メールでお茶に誘われたとき、私はこう答えた。

「今は本の執筆で手いっぱいなんです。でも、書き終わったらぜひご一緒させてください。夏の終わり頃でどうでしょう?」

メールは、ノーを言う練習にちょうどいい。文章を何度でも推敲できるし、直接顔を見なくてすむからだ。

3.予定を確認して折り返します

ある知り合いの女性は、有能であるがゆえに誰からも便利に使われていた。非エッセンシャル思考の典型のような人で、能力があるものだから、何でも引き受けてしまう。周囲の人はそれを知っているので、何かあると彼女に頼ろうとする。「このプロジェクトが大変なので、手を貸してくれませんか?」と言われると、彼女はついイエスと言ってしまう。仕事を抱えすぎて、ストレスばかりが増えてくる。

そんな彼女の生活を変えたのは、「予定を確認して折り返します」という言葉だった。

いったん時間をおいて考えると、断ることが容易になる。その場でつい引き受けてしまうことがなくなり、自分のペースで仕事ができるようになった。

上司からの依頼にはどう断るか?

4.自動返信メール

休暇中や外出中に自動返信メールを使う人は多いと思う。今は返信できないので、あとで折り返しますというものだ。受けとったほうもいやな気持ちにならないし、とても洗練された断り方である。それなら、休暇中にかぎらず普段から自動返信メールを使ってみてはどうだろう?

私はこの本を書いているあいだ、「執筆のために隠遁中」という件名の自動返信メールを設定していた。「現在、本の執筆に忙殺されております。返信が遅くなりますが、どうかご理解ください」

驚いたことに、誰も怒らなかったし文句を言わなかった。執筆が終わるまで返信できないという事実を、そのまま受け入れてくれたのだ。

5.どの仕事を後まわしにしますか?

上司からの依頼は断りづらいものだ。機嫌を損ねたら、どうなるかわからない。それでも、無理な状況で仕事を引き受けてしまうと、結果はよけいに悪いことになる。目の前の依頼を断らなければ、もっと重要な仕事が駄目になるかもしれないのだ。

単にノーと言うのが難しければ、上司にトレードオフを意識させよう。

たとえば、「はい、ではこの仕事を優先でやります。今抱えている仕事のうち、どれを後まわしにしましょうか?」。

あるいはこんなふうに断ってもいい。

「今かなり仕事を抱えているので、これを無理やり差し込むと品質が落ちてしまいます」

私の知り合いも、部下にそうやって断られたと言っていた。筋の通った断り方に納得し、その仕事は別の何でも引き受ける部下にまわしたそうだ。