コロナ禍で多くの企業が大ダメージを受けた。しかし、株価は早くもコロナ前の水準を回復しつつある。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史氏は「各国の中央銀行が国債を引き受け、紙幣を刷りはじめ現金を市場に供給し始めた。まさに財政ファイナンス相場だ」という――。
約3カ月半ぶりに終値で2万3000円台を回復した日経平均株価=2020年6月8日、東京都中央区
写真=時事通信フォト
約3カ月半ぶりに終値で2万3000円台を回復した日経平均株価=2020年6月8日、東京都中央区

コロナ収束を待たず急浮上するマーケットと顕在化する危機

世界中のマーケットで、株価が上昇し、長期金利が底を打ってじわじわと上りはじめ、デジタルゴールドとも称されるビットコインの価格も上昇している。

そして、他国ぶっちぎりの財政ファイナンス(国の借金を中央銀行が紙幣を印刷して賄うこと)を行ってきた日本の通貨・円が弱含みはじめた。マーケットの動きを見ていると、いよいよ世界的な「財政ファイナンス相場」が始まったのではないか? と思ってしまう。

各国がコロナ禍対策の大型財政政策を打ち、その財源調達のために発行された国債を中央銀行が大量に買い取り始めた。これは平時から日本が激しく行ってきた財政ファイナンスそのものだ。財政ファイナンスは、今までは日本だけが過激に行っただけなので、その影響をマーケットは真剣に考えてこなかった。

しかし、世界中の国々がこうした政策を始めたがゆえに、世界中が「財政ファイナンス」を真剣に考え始め、その考察に基づいて投資活動を開始したのだと思っている。

「財政ファイナンス」が世界の市場のメイントピックになり、今後の市場動向を決めるキーワードとなるのなら、日本にとっては危機を迎える。日銀の債務超過による円の暴落、円の紙くず化のリスクが顕在化してくるからだ。