「国民一人当たり10万円給付」の予算は12.8兆円
先日、私の中学時代のクラスメートで理系の大学教授をしている友人から久しぶりに「なあフジマキ、こんなに借金を重ねてこの国は大丈夫か? ハイパーインフレにならないのかね?」との電話があった。
専門が全く違うせいか、私が「ハイパーフジマキ」と揶揄されていることなど知らないうえでの質問だった。普段全く経済に興味のない人さえ、コロナ禍に対する政府の大型補正による借金増で、財政が心配になり始めたらしい。
第1次補正予算で「国民一人当たり10万円給付」が決まったときには、ただ喜んでいるだけの人が、私の周りにも多かった。しかし第2次補正の話が出て、1次補正予算と合わせて60.7兆円もの国債追加発行となると、さすがに能天気に喜んでいるわけにはいかなくなってきたようだ。
そもそも「国民一人当たり10万円配布」だけでも、そのコストは12.8兆円と巨額だ。今年度の法人税分予想額は12.0兆円だから、この配布だけで今年度法人税収分を全部使い切ってしまうことになる。
さらにいえば、東日本大震災の際の復興特別税11.6兆円ともほぼ同額なのだ。この特別復興税11.6兆円は25年間、個人所得税を2.1%増額することによって賄う。「国民一人10万円給付」に必要な12.8兆円にほぼ匹敵するのだから「国民一人10万円給付」には、今後、復興特別税並みの増税が待っているということだ。
麻生太郎財務相は5月29日の閣議後記者会見で「増税に頼るのではなく、景気回復によって税収が伸びることを目指す」と発言し、増税に否定的な考えを示した。しかし世の中、フリーランチなど存在しないはず。この一人10万円は政府からの恵み金ではない。将来の増税によって賄われることを覚悟する必要がある。
第1次・第2次補正予算の国債追加発行合計は60.7兆円
「国民一人10万円配布」予算の12.8兆円だけでも巨額なのに、第1次・第2次の補正を合計すると、その規模は60.7兆円にもなる。これこそとんでもない額だ。今年度税収予想の63.5兆円とほぼ同額なのだ。すなわち、今年度は税収分のおおかたを補正予算に使ってしまうということ。
こうなると本来の、社会福祉、防衛、公共事業、文教などの費用は国債の発行(借金)で賄われるわけで、その結果、今年度の新規国債発行額は90.1兆円(他に財投債2.1兆円)にも膨れ上がる。だからこそ私の友人ように、財政を心配する人も出始めたのだ。
ちなみにこの90.1兆円とは新規の国債発行額で、このほかに国は今年度、借換債108兆円等を合わせて253兆円も国債が発行されることになる。今年度満期が来る国債は償還しなければならないが、赤字だから返済原資はない。だからその分も国債(借換債)を発行して調達せねばならない。そんな巨額な国債を買う余力は民間にはないから、日銀が紙幣を刷って大部分を買い取ることになる。