ちなみに2014年6月23日の日経新聞に金融史が専門のファーガソン・米ハーバード大教授が「1950年~80年は中銀の肥大化がインフレと深くかかわってきた」と講演で発言したとの記事が載っている。

ファーガソン教授の指摘によると「1900年以降、主な中銀の資産規模はGDPのほぼ10%~20%」だったそうだが、講演当時の2014年時点でさえ、FRBをはじめECBやBOEの資産規模はGDP比で約25%弱と、歴史的に高い水準にあるそうなのだ。教授が「現在の日銀は110%」と聞いたとき、どんなコメントをされるか聞いてみたいと思う。

なぜ中央銀行のバランスシートがメタボだとまずいのか?

私は日銀のバランスシートを「メタボ体質」繰り返し指摘してきたが、なぜそれが悪いことかを述べておく。景気が回復した時、中央銀行はジャブジャブにばらまいた資金を回収せねばならない。異次元緩和と逆のオペレーションを行うわけだが、市場で売り払うと長期金利が急騰するのでそれは出来ない。

保有国債の満期を待ってその資金を国から回収するしかないわけだが、その資金は政府が税金で集めたお金だ。税収はGDPとほぼ比例する。GDPが2倍に増えれば税収も2倍になるということだ。つまり「中央銀行のバランスシートの対GDP比」とは、「中央銀行が市中にばらまいた資金をどの程度簡単に回収できるか?」の指標である。

しかも日銀の場合は、そもそも政府の財政赤字がひどくて政府が税金で日銀に満期国債元本金を償還してくれるとは到底思えないのだ。

すなわち、対GDP比で中央銀行のバランスシート規模が大きいと、その中央銀行は、金融調節機能を失ったと考えられ信用を失う。その結果その発行する通貨は信頼を失うということ。又、実際に中央銀行が金融調節機能を失えば、その通貨は暴落し、ハイパーインフレ一直線となる可能性が大なのだ。

日銀は発行国債の50%をも購入してしまった

日銀が世界最大のメタボになった理由は長期国債を爆買いしたせいだが、その結果、2020年3月末現在で、国債発行額は987.5兆円。日銀の国債保有額は485.9兆円だから日銀は発行国債の49.2%をも購入したことになった。

麻生太郎大臣や黒田晴彦日銀総裁は、国会で、私が「日銀の国債爆買いは財政ファイナンスではないか?」と聞くたびに「デフレ対策のために行っているから財政ファイナンス」ではないとお答えになった。もし「そうだ」と認めれば、市場がその瞬間、「日本売り(=株、国債、円のトリプル安)」を起こすだろうから、そう答えざるを得なかったのだと思う。

しかし、中央銀行が、国債発行額の半分近くを保有しているなど「財政ファイナンス」と言わずになんというのでだろうか?