金持ちだから私立に通わしているわけじゃない
子供のために親たちが私立校に納付する費用は決して少なくない。全国には私立の幼稚園が約6500、小学校が約240、中学校が約780、高校が約1300校あり、私立に通う児童・生徒の割合は高校で3割にとどまるものの、幼稚園では8割に上る。授業料を見ると、慶應幼稚舎(東京)が年間94万円、関西大学初等部(大阪)は80万円、玉川学園中学部(東京)は約85万円、関西学院高等部は約64万円(兵庫)などと高額で、私立大の平均授業料との差はない。この他にも施設費や教材費などがかさむ。
神奈川県内の私立小に入学した子供と公園で遊んでいた母親の1人は「私立に通わせている保護者は全員がお金持ちというわけではない。先生の給料や設備の維持管理などには学費が必要ということは頭では分かるが、ママたちと顔を合わせるたびに『授業料は返ってこないのかな』という話になる」と語る。
返還義務はないとの国の「お墨付き」に
とはいえ、国の姿勢は冷淡だ。文科省が3月11日付で通知した事務連絡には「臨時休業により授業が行われないことになる場合においても、授業料は、学校の教育活動に必要となる費用を総合して定められているものであり、必ずしも授業料の返還が生じるものではないと考えます」と記載されている。学校側は教職員の給料支払いや固定費などを計算して学費を決定しており、返還義務はないとの国の「お墨付き」となっている。
ネット上にはこうした政府の対応に理解を示す声がある一方で、「学校に通っていないのにお金が満額とられるのはおかしい」「オンライン授業もなく、教科書を見て課題をただ解け、というだけならば先生はいらないのではないか」との声もあがる。
大学では独自に授業料の返金に応じる措置をとったり、学生に奨学金を支給したりする支援策が講じられているが、幼稚園や小中高校は一部を除き消極的なところが多い。学校側には、新学年が約2カ月遅れになる「補填」として夏休みを短縮して授業を実施することも背景にあるとされる。だが、都内の有名私立高の男性教諭は「これだけ長い休校は記憶になく、授業料の返還を求める集団訴訟が起きないか心配だ。少なくとも学校施設は使えていないわけで、施設費は不要との声はあるだろう。仮にそうしたムーブメントができた場合には私立校全体で返金するか否かの対応を一致させる必要がある」と懸念する。