反日種族主義と朝日慰安婦問題がたどった道
だが、その“好意”も行き過ぎれば結果的に日韓にさらなる不幸を招くのではないかという気がしてならない。
『反日種族主義』を文藝春秋に売り込んだのは産経新聞編集委員の久保田るり子氏。久保田氏は20年4月に「李栄薫氏公認副読本」と銘打って『反日種族主義と日本人』(文春新書)を出版してもいる。
それによると、久保田氏は廬武鉉政権下で歴史教科書が親北朝鮮的な内容へ偏向していくことに危惧を覚えた李教授らが開催した「教科書フォーラム」の取材をきっかけに李教授らの動きを知り、さらに近年はYouTubeで発信していた李教授らの近現代史講座の取り組みを「大変貴重な史実へのアプローチ」と感じ、日本での出版を持ちかけたという。
ここで思い出すべきことがある。『反日種族主義と日本人』にもあるように、慰安婦問題は朝日新聞が火をつけ、韓国に逆輸入されたようなところがある。先駆けとなる記事を書いた元朝日新聞記者の植村隆氏に対する非難は今なおやまない。『反日種族主義と日本人』の帯でも「反日を煽ったのは日本人だった!」「北朝鮮や朝鮮総連が種を蒔き、日本の左派が反日を成長させた」としているように、日本の保守派は韓国側の反日運動と日本の左派の記者や学者が連動していたことを非難してもきた。
「親日賛美禁止法」の“価値”
日本の保守派は朝日新聞の論調を虚報というだけでなく「韓国側に立っていてフェアでない」ことも批判してきたわけで、そこからすると韓国保守派の政治的巻き返しを、日本人(の新聞記者や保守派)が支援することが韓国の革新派にとってどう受け取られるかは、考えておく必要があろう。
そもそも韓国内の保革の戦いに「(過去だけでなく現在も含む)日本との距離」が影響している以上、日本からの支援は韓国国内の保革の分裂を刺激することになり、革新派からは返す刀でさらに強烈な反日的な法案や言説が「積弊清算」の名のもとに飛び出しかねないとの懸念が拭えない。
「親日賛美禁止法」がそうした政治的応酬の中で“価値”を増し成立するとなれば、韓国の保守派はもちろん、日本にとっても本末転倒ではないか。
※編集部註:初出時、池畑修平氏を苗字の漢字を誤って表記しておりました。正しい漢字に訂正します。(5月22日15時55分追記)