このままだと学術的な議論も取り締まられかねない

今回話題になっている「親日賛美禁止法」はさらに厳しい内容で、仮に法案がこのままの内容で成立すれば、学術的な議論すら取り締まられかねない。まさかとは思う一方、19年9月には韓国の京畿道議会で、〈道内の各学校が保有する特定の日本企業の製品に「戦犯企業」のステッカーを貼ることを公認する条例〉が可決されてもいる(日本「戦犯」ステッカー可決 貼るのは生徒の判断 韓国)。「親日賛美禁止法」のもとになった法案は18年に発議されるも成立には至らなかったが、今回はどうなるか。経過に注目だ。

日本からすると常識を逸しているとしか思えない「親日狩り」はなぜ起きるのか。「韓国は反日だから」「建国神話自体が抗日だから」と言ってしまえばそれまでだが、事はそう単純ではない。こうした法案は「日本VS韓国」といった構図だけではなく、韓国国内の「保守派VS革新派」の分断から出てきているものだとの指摘がある。

文在寅が掲げる「積弊清算」について、元NHKソウル支局長の池畑修平氏は『韓国 内なる分断』(平凡社新書)で、「反日ではなくあくまでも韓国内の保守派潰し」としている。

文政権、保守派の全否定で日韓関係が収拾つかず

「積弊清算」とは、単純に言えば戦前戦後を通じて、日本との協力によってなされたものを含む“韓国の保守派”による功績や制度を清算するという理念を表す言葉だという。

朴正煕政権の経済政策である「漢江の奇跡」が韓国の教科書から消えたのも「積弊清算」の一つで、仮にそれが経済躍進の輝かしい歴史であったとしても、保守政権の政策である(しかも軍事政権で日本の協力を得ている)以上、誤った手法によるもので正義に反しており、清算されなければならない、と判断するのが文在寅大統領ら革新派の考えだという(参考:元大統領逮捕、韓国「積弊清算」の底流にあるもの)。

韓国国内の保革の戦いにおいて日本が引き合いに出されているというわけだが、当然、現在の日韓関係にも影響してくる。池畑氏も「(革新派である文在寅政権が)保守派政権の実績を全否定しようとするあまり、日韓関係までもが収拾がつかなくなってきた」としている。