トラブル例のなかには3000万円台も

発毛、育毛、植毛、カツラ……、さまざまなサービスで日本人男性最大の悩み“薄毛”に福音をもたらす毛髪業界。が、おカネでアリ地獄にはまるのもこの業界だ。昨年には、育毛ケアで効果が薄かったと50代の男性が大手業者を訴え、4年間で支払った680万円のうち430万円の返還で和解した。生える保証のない育毛にこれほどの出費と手間を惜しまぬ禿げの気持ちは複雑だといえよう。

育毛や植毛の手段と比べて髪の毛を増やす最も手軽な方法はカツラだが、この費用もバカにならない。

カツラの価格は面積によって異なり、平均して50万円前後、高いものは100万円近くにもなる。大まかには、全面的にかぶる全カツラと、薄くなったところに装着する部分カツラにわけられるが、人気があるのは金具で装着するオーダーメードの部分カツラ。数年前には接着剤で貼り付ける新しいタイプも登場した。市場規模は年間1000億円以上ともいわれる。

商売の内実は秘密主義だ。広告では「相談無料」や「1日250円から」「1回4500円」と謳うが、いずれもピンポイントの料金であり総額でいくらかかるかを説明しない。

「客は来店して初めて総額を知らされるわけです。あまりの料金の高さにひるんでしまう客には、マインドコントロールまがいの強引な勧誘トークを何時間も続け、次第に『自分はこの治療をしないと禿げてしまう』『ばれないカツラで人生が変わる』などと信じ込ませるのです」(大手カツラメーカー・営業担当)

カツラメーカーが総額を明らかにしない理由は、カツラの代金だけではカツラを維持できないからだ。