大枠は先行企業を踏襲経常利益率は5割超

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)国内3番手のグリーが好調だ。2009年6月末現在の会員数は1260万人。この1年間で706万人が増え、会員数は2倍以上に増えた。最大手ミクシィは1741万人、2位のモバゲータウンは1448万人とまだ差はあるが、時間の問題だろう。

業績も驚異的だ。09年4~6月決算の売上高では、ミクシィが前四半期に比べて0.8億円少ない30.5億円、モバゲーを運営するディー・エヌ・エーが17億円少ない88.1億円と苦戦したのに対し、グリーは51.4億円と12億円の増収を果たした。また経常利益は26.3億円で、経常利益率は5割超。ミクシィやディー・エヌ・エーも経常利益率の高い企業として知られるが、それらを10ポイント以上も上回る破格の水準である。

グリーの最大の強みはモバゲーのビジネスモデルを徹底的に分析し、攻略をしかけたところにある。

携帯SNSで先行したモバゲーのビジネスモデルは、きわめて秀逸だった。携帯キャリアの公式メニューには載らない「勝手サイト」で、課金モデルではなくアバター(分身キャラクター)を使った巧妙な広告モデルを構築した。アバターを着飾るには「モバゴールド」という仮想通貨が必要となるため、ユーザーは広告のクリックやスポンサーサイトへの登録、友人の招待に躍起となる。この「モバゴールドほしさ」が起爆剤となって広告効果や会員数増加を一気に加速させた。

一方で2つの弱点があった。第一に、06年のスタート当初は携帯インターネットの主なユーザー層である十代に向けた展開をせざるをえなかったこと。この結果十代の「若者」には爆発的に広まったものの、逆に20代後半以上の「大人」の利用者を遠ざけてしまう結果となった。第二に、広告に依存したビジネスモデルになってしまったことだ。

「アバター」を着飾るアイテムが収益の柱!
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「アバター」を着飾るアイテムが収益の柱!

グリーはこの2つの弱点を乗り越えた。アバターと仮想通貨という仕組みは、そっくりそのままモバゲーを踏襲している。しかし後発のメリットを生かして大人でも楽しめる釣りゲーム「釣り★スタ」やバーチャルペット「クリノッペ」などを導入し、「大人」への訴求に成功した。グリー利用者の年齢比率は30代以上が全体の39%と30代以上が26%しかいないモバゲーと比べると、かなり「大人」に傾斜している。これには携帯SNSの普及率が低い世代にも今後拡大する可能性を残すと同時に、高い広告効果をももたらすという二重のメリットがある。

さらに強力だったのが、仮想通貨の購入スキームである。「勝手サイト」のモバゲーと異なり、グリーはauと提携するなど公式サイトとしてスタートしたため、通信料への課金として仮想通貨を購入できる。一方、モバゲーではネット用の電子マネーやクレジットカードを使う必要があり、ハードルが高い。「課金モデル」という出発点がグリーの大きな武器だといえる。

モバゲーやミクシィは広告に依存したモデルから脱却できずに苦しんでいる。ミクシィの現在の株価は07年11月に記録した200万円台の3分の1以下となる61万8000円(8月10日終値)。ディー・エヌ・エーは08年5月の70万円超から半額以上も下げた29万5300円。一方、グリーは08年12月の上場初値5000円から株価を伸ばし、09年8月には8000円台を記録した(8月10日終値7740円)。株式市場からの高い評価は、この豊かなマネタイズモデルが原動力になっているのである。

※数字はすべて雑誌掲載当時

(坂本道浩=撮影)