アップル製品の成功には、広告も大きな役割を果たした。アップルジャパンでマーケティングコミュニケーションを担った河南順一氏は「ジョブズの戦略は『フォーカス&インパクト』。広告でも、見る人に衝撃を与えることが最優先された。そのために、日本の駅で白紙の広告を出したこともある」と説く――。
※本稿は、河南順一『Think Disruption アップルで学んだ「破壊的イノベーション」の再現性』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
「量より質」だったアップルの広告戦略
スティーブ・ジョブズの戦略は一貫していました。それは「フォーカス&インパクト」。何事においてもインパクトを最大化することを考えます。そこから逆算して、やるべきことを絞り込む──これこそ「ディスラプターの思考法」です。
アップルがインパクトを最大化する手立ての1つは、年に数回開催されるマックワールドでの基調講演でしたが、「フォーカス&インパクト」という戦略は広告の出稿でも徹底されていました。出稿量や視聴者・読者へのリーチといった「量」を最大化するのではなく、存在感と衝撃といった「質」を最大化することが最優先されたのです。
たとえばテレビ。通常、広告代理店は広告出稿のGRP(広告露出の単位)を最適にするメディアプランをクライアントに提案しますが、アップルではパッケージに組み込まれた番組や時間帯の中で、インパクトの最大化につながらないものは徹底的に排除しました。単純に視聴率の高い番組や時間帯に絞って露出を増やすわけではありません。