皆さんおなじみのカロリーメイト。一度も食べたことがない、あるいは知らないという方はそんなに多くないのではないでしょうか。では、そのカロリーメイトのCMが大きく変わったことをご存じでしょうか。なぜ、CMが変わったのか、インサイト分析の第一人者・桶谷功さんが読み解きます。
オフィスで仕事をする女性たち
※写真はイメージです(写真=iStock.com/kokouu)

カロリーメイトのCMに一体何があったのか

プレジデント ウーマン オンラインをお読みのみなさん、こんにちは。桶谷功です。

この連載は身近な商品を例にとり、その背景にどんな企業戦略があるのかを読み解いていくというものです。前回は高級アイスクリームの「ハーゲンダッツ」を取り上げました。今回は大塚製薬の「カロリーメイト」を分析してみたいと思います。

カロリーメイトのCM、“KEEP THINKING”編がオンエアされたのは、2019年の春のことでした。サカナクションの山口一郎さんが、たくさんの機材に囲まれてコンピュータを操作しながら、カロリーメイトを口にします。でも視線はモニターを見たままで、表情も特に変化なし。そこへ山口さん自身による、こんなナレーションが入ります。

「考え続ける人にとって、栄養は味方になる。満腹は邪魔になる。“KEEP THINKING”、バランス栄養食、カロリーメイト」

以前のカロリーメイトのCMは、「がんばれ若造」というキャッチコピーとともに走り回る若者が登場したり、「お化粧する時間がなくても、これなら食べられる」というシーンを描いたりなど、とにかく急いでいるときでもすぐに食べられる利便性を強調していました。そのためどちらかというと、ドタバタしたものが多かったように記憶しています。ところが“KEEP THINKING”は静謐で思慮深い印象で、いままでとまったく方向性が違うのです。

私はこのCMを見た瞬間、「大塚製薬はカロリーメイトのイメージを180度変えようとしているな」と確信しました。