かつてのアップルはずっと「負け犬」と呼ばれ続けていた。そこからなぜ大逆転できたのか。アップルジャパンでマーケティングコミュニケーションを担った河南順一氏は「再建のために呼び戻された創業者のスティーブ・ジョブズは、激情家で一見理不尽に思えることも多かったが、決して人を裏切らなかった。だから周囲も付いてきた」と振り返る――。
※本稿は、河南順一『Think Disruption アップルで学んだ「破壊的イノベーション」の再現性』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。
アップルは「アンダードッグ」だった
今でこそメインストリームとなったアップルですが、アップルはずっと「アンダードッグ」でした。「アンダードッグ(underdog)」は、カリフォルニア州・クパチーノ本社のスタッフとのミーティングでよく耳にした言葉で、雑誌やウェブでも、アップルを語るときによく使われていました。
アンダードッグを辞書やウェブで引くと「負け犬」と出てくるのですが、実際にアップルでの会話や記事で使われるニュアンスには、否定的なひびきよりも、むしろポジティブな意味合いがありました。アンダードッグが英語圏のニュースで見出しに使われるのは、期待されていなかった選手が予想に反して試合を勝ち進んだというシチュエーションで多いようです。
でも、アップルで耳にしたアンダードッグが持つ意味合いはもっと深いものがありました。たしかにアンダードッグは、状況としては「負け犬」の境遇に甘んじているのですが、自身は信念を持って突き進もうという気概を持っているのです。成績としては黒星が目立ち、負け越していても、それにめげることはありません。