買いから一転、売りが続く「投資案件のホテル」
もう1つの課題は、近年乱立した投資案件のホテルだ。
もともと京都では、ホテルバブルにより高騰した土地を高値で仕込み、ホテルや簡易宿泊所を建設する流れが続いていた。一昨年あたりに参入した後発組など、利回りもギリギリの水準で回してきた。それでも京都なら稼働率が高く、2020年は東京オリンピックもあって1年目から収益が見込めるという前提で建設されたところも多いのだ。
しかし実際には、総客室数は2014年から右肩上がりで増え続け、5万室に迫っているのに対し、客室稼働率は2015年の89.3%をピークに下落傾向にあり、2018年には14年とほぼ同じ水準の86.4%にまで落ち込んでいる(京都市調べ。2019年11月27日付京都新聞より)。
結果、この1、2年で収益率が大幅にダウン。収益狙いの民泊が問題視されていた簡易宿泊所に至っては、京都市の条例改正により、突如として管理者の24時間365日の常駐が義務付けられ、利益率が劇的に下がっていたところに、コロナショックが襲ってきた。
現在、京都市内のM&A案件にはホテル事業が続々登場し、不動産市場にはホテルの売却案件が急増している。マンションに転用できる物件は用途変更し、それができないホテルは体力が続く限り耐え凌ぐ。どちらもできない事業者は、早々に市場からの退場を余儀なくされる。そうした事態が目下進行中だ。
観光産業、過去最大級の危機
京都でホテルの客室数が急増する中、観光産業への過度の依存は危険だと感じてきた私は、1冊の書籍にまとめ警鐘を鳴らした(『京都が観光で滅びる日』ワニブックス、2019年)。
今となっては、みなさん身に染みて感じているだろうが、観光産業は風評に影響されやすい。為替リスクや政情不安(日本の場合は中韓関係)、自然災害、噂・デマといったさまざまな風評の影響を、いい意味でも悪い意味でももろに受ける産業で、企業の自助努力では天変地異並みにリスクヘッジが難しいという課題を抱えている。
しかし、これは今に始まった話ではない。関係者はよくわかっているはずだが、時間が経つと忘れ去られ、目先のイベント(オリンピックなど)に目を奪われ、翻弄されてきただけである。その結果がこれだ。