2011年の東日本大震災では、避難時にペットを置いて行かざるをえなかった人たちが多くいた。ペット探偵の藤原博史氏は「離れ離れにならないためにも、日ごろからペットと一緒に避難訓練をしておくべき。福島県で犬猫を探した経験をお話しましょう」という——。

※本稿は、藤原博史『210日ぶりに帰ってきた奇跡のネコ ペット探偵の奮闘記』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

人けのない福島県双葉町の道。3月11日の地震と津波によって引き起こされた原子力発電所の事故によって人々は避難を余儀なくされた=2011年4月18日
写真=EPA/時事通信フォト
人けのない福島県双葉町の道。3月11日の地震と津波によって引き起こされた福島第一原子力発電所の事故によって人々は町からの避難を余儀なくされた=2011年4月18日

飼い主とペットの暮らしも引き裂かれた

迫りくる高波にのみ込まれ、街全体が押し流されていく。連日、テレビで流れる巨大津波の映像を見ながら、私は駆り立てられるような気持ちをじっとこらえていました。

2011年3月11日、東日本大震災で甚大な被害を受けた東北の地。被災した人々はもちろん、捜索依頼を受けてきたご家族とペットのことが気がかりでした。考え始めると、これまで歩いてきた街の風景も数多くよみがえってきます。

ペットをめぐる悲しいニュースも入ってきていました。福島県のある男性は、家族と高台に避難したところで家に残した愛犬を思い出し、奥さんが止めるのを振り切って自宅へ戻ったそうです。そのまま男性と1頭の行方は分かっていません。

また着の身着のままで避難した人たちの多くが、ペットを置いて行かざるをえなかったでしょう。置き去りになったイヌやネコ、そのほかのペットはどうなってしまったのか。大震災は、飼い主さんとペットの暮らしも引き裂きました。

これほどの規模の災害には自分にできることなどわずかでしかありませんが、とりあえず現地へ行かなければと思ったのです。