環境省も「必要な措置」として呼びかけ

そうした問題を踏まえて、2013年になって環境省が発表したのが「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」でした(2018年、熊本地震での経験をふまえて「人とペットの災害対策ガイドライン」に改訂)。これは次のように述べて、ペットと飼い主との同行避難を推奨している点で、画期的なものと言えます。

過去の災害において、ペットが飼い主と離れ離れになってしまう事例が多数発生したが、このような動物を保護することは多大な労力と時間を要するだけでなく、その間にペットが負傷したり衰弱・死亡するおそれもある。また、不妊去勢処置がなされていない場合、繁殖により増加することで、住民の安全や公衆衛生上の環境が悪化することも懸念される。このような事態を防ぐために、災害時の同行避難を推進することは、動物愛護の観点のみならず、放浪動物による人への危害防止や生活環境保全の観点からも、必要な措置である。

また三宅島噴火災害動物救援センター(2001年設置)で活動していたボランティアが中心になったNPO法人「アナイス──動物と共に避難する」が立ち上がり、活動に取り組んでいます。

この団体の目的は、「緊急災害時に飼い主と動物が同行避難し、人と動物がともに調和して避難生活を送ることができるようサポートをする」ことです。そのためには、ペットの防災対策や避難生活での心得などを知っておくことが欠かせません。「アナイス」はこうした情報提供をするとともに、各自治体への協力要請と働きかけなどを行っています。

台風災害で断られたケースが明るみに

東日本大震災を機にペットとの同行避難が着目されるようになり、避難所を運営する各自治体の動きも進んできました。ところが、フタを開けてみたら対応は出来なかったというのが、2019年10月に相次いだ台風災害だったのです。

なかでも台風19号の被害の際には、埼玉県川越市で浸水した自宅から消防ボートで救出された中学一年の男子生徒が「ネコを飼っているので避難できなかった」と語ったことが報じられました。

ほか、ネット上には「家族で避難所へ行ってみたものの、ペットNGだった」「同行避難は断られました」などという声があり、やむなくペットを連れて家へ戻った人たちも少なくなかったようです。

もっとも、この台風ではホームレスの男性が東京都台東区の避難所で過ごすことを拒否されたという一件も報じられましたから、万が一の際の制度設計はまだ課題が多いのでしょう。