組織の責任者が専門家を扱うノウハウ

●専門家の「権威」を過剰に評価してはいけない
橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)
橋下 徹『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』(プレジデント社)

専門家はあくまでもその専門領域について知見を有しているのであって、他の領域についてまで専門的な知見を有しているわけではない。ある専門家の専門外の領域についての意見は、あくまでも専門外の者の個人的な見解として扱わなければならない。

ここでよく間違ってしまうのは、ある領域について権威を持っている人の意見を、他の領域についても非常に重く扱ってしまうことである。いわゆる「権威に負けてしまう」ということであるが、ここには注意が必要である。

(略)

専門家の意見はその専門領域のものについてのみ尊重するということが、組織運営上重要である。

●専門家は、世間から猛批判を食らうことは苦手である

(略)

●受託元の組織と戦うことは苦手である

(略)

僕も大阪市長時代、大阪市役所の不祥事を徹底調査するために、第三者委員会を設置した。そしてこの第三者委員会が、市役所に一切気兼ねすることなく調査できる環境を作った。

市役所組織に対しては、この第三者委員会は僕の名代であるので、第三者委員会の調査には従うよう命令した。調査に従わない場合には、懲戒処分等に付すことまで宣言した。

そうしたらこの第三者委員会が、バリバリに調査をやりまくって(笑)、これまでの市役所の問題点を次々に明らかにしていった。

ただし調査に行き過ぎもあり、憲法上の思想良心の自由(19条)を侵害するとの指摘があって、大問題となった。この調査は途中で撤回したが、その後の裁判により僕は大阪市長として法的責任を負うことになった。そして、橋下の調査は違憲だ! と散々メディアでも批判され、市長を辞めた後は弁護士会の懲戒手続きにも付された(最終的には懲戒処分にあたらないという結論)。しかしこれは、僕が専門家をフルに活用しようとしたことの責任であり、仕方のないことだ。

これくらい、組織の最高権力者であるトップが覚悟を決めない限り、専門家が受託元の組織を一切気にしないバリバリの働きぶりを発揮することはない。たいていは、受託元の組織の機嫌を損ねないように振舞うか、または受託元の組織とけんかして、組織から放り出されるかだ。

(略)

●総合判断(政治判断)を求めてはいけない

ここまでに挙げた3つの専門家の特性からすると、専門家に総合判断(政治判断)を委ねるわけにはいかない。これは専門家のみにあてはまることでなく、一般的に言えることだが、総合判断(政治判断)は、すべてを見渡すことができ、全責任を負う立場の者が行うべきである。通常は組織のトップである。

政治行政の領域においては、あらゆる分野の専門家の意見を聴きながら、役所組織を動かす権限を持ち、世間一般に対して全責任を負う首相(知事・市長)こそが総合判断(政治判断)をなすべきである。

(略)

(ここまでリード文を除き約2700字、メールマガジン全文は約1万3600字です)

※本稿は、公式メールマガジン《橋下徹の「問題解決の授業」》vol.191(3月10日配信)の本論を一部抜粋し、加筆修正したものです。もっと読みたい方はメールマガジンで! 今号は《【専門家「フル活用」のノウハウ(1)】続くコロナウイルス危機! 政府はこうして専門家会議を使いこなせ》特集です。

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