なぜ過労死や長時間労働の問題はなくならないのか。弁護士の明石順平氏は「労働基準法にはさまざまな抜け道がある。また違法残業の罰則は企業に甘く、事実上ブラック企業は野放しだ」という――。
※本稿は、明石順平『人間使い捨て国家』(角川新書)の一部を再編集したものです。
原則は「1日8時間、1週40時間」以内
労働基準法(以下、労基法)の原則では、1日8時間、1週40時間以上労働させてはならないことになっている(労基法32条)。また、休日は週に1日又は4週で4日以上である(同法35条)。休日の決まりはこうなっているものの、1週40時間という縛りがあるので、多くの会社は土日休みの週休2日制を取っている。
使用者が、労働者の過半数で組織する労働組合か、それが無い場合には労働者の過半数を代表する者との書面による協定を締結して労基署にこれを届け出た場合、この「1日8時間、1週40時間」を超える残業や、休日労働をさせることができる。
この決まりが労基法36条に規定されているので、一般に「三六(サブロク)協定」と呼ばれている。そしてこの協定は事業場ごとに締結する必要がある。
この三六協定であるが、そもそもこれすら締結していない企業が非常に多い。やや古い統計になるが、厚労省の平成25(2013)年労働時間等総合実態調査によると、三六協定を締結していない事業場の割合は44.8%にものぼる。これを日本の企業の99%超(従業員数でいうと約70%)を占める中小企業に限定すると、なんと56.6%が三六協定を締結していない。