街なかで、若い販売員が店内はおろか、路上にまで出て大声で客を呼び込む。店内には「2足目半額」と特筆大書したポスター。やや垢抜けない販売スタイルで知られるABCマートが、消費不況をものともせずに拡大成長を続けている。英「Hawkins(ホーキンス)」、米「VANS(バンズ)」といった海外の有名靴ブランドの商標権を取得し、自社で開発から製造、販売までを手がける。年間80店以上を出店する一方、既存店売上高でも前年比1%以上の増加を堅持し、国内で約450店、韓国でも50店以上を展開する。

<strong>ABCマート社長 野口 実</strong>●1965年、岐阜県生まれ。中央大学経済学部卒業後、シヤチハタ東京商事を経て、91年、ABCマート入社。現場での販売などを経て、2002年、小売営業部長に就任。在庫管理を徹底するためのシステムづくりに大きく貢献する。04年、常務、営業本部長。07年より現職。
ABCマート社長 野口 実●1965年、岐阜県生まれ。中央大学経済学部卒業後、シヤチハタ東京商事を経て、91年、ABCマート入社。現場での販売などを経て、2002年、小売営業部長に就任。在庫管理を徹底するためのシステムづくりに大きく貢献する。04年、常務、営業本部長。07年より現職。

2009年2月期の連結決算では、売上高991億円、経常利益211.6億円と、2ケタの増収増益で過去最高を更新する見込みである。売上高営業利益率も21.5%と、低収益構造に喘ぐ小売業界では突出して高い。2年前に社長に就任した野口実氏は43歳の若さである。

「お客様に支持をいただけている理由として、価格がリーズナブルであるということが挙げられると思います。価格調査はかなりがんばってやっていて、その地域で最安値になるようにしています。

いわゆるプライベートブランドは、ノーブランドという意味だと思いますが、うちで持っているホーキンスとバンズは自社開発商品で、ナショナルブランドと同じという感覚です。この自社開発商品が売り上げの半分を占めます。

もう半分のナショナルブランドも、ナイキさん、アディダスさんなど、全部メーカーとの直取引です。私たちはもともと生産卸をやっていましたので、問屋さんを一切通さないという考え方です。

うちと一般の靴屋さんとの違いは、ファッションの部分を切り取って商売をしているということなんです。一般的に、靴屋さんってファッション性を感じないじゃないですか。私自身、靴屋は道具的な靴を売っているというイメージがあって、若いころは靴は洋服屋で買うものだと思っていました。ファッション性で靴を買うという方は、ズックからスリッパまで置いてある総合靴屋さんの売り場に魅力を感じないのではないでしょうか」