不況下の「巣ごもり消費」によりインターネット通販が絶好調の楽天。2008年12月期決算では営業利益、経常利益ともに過去最高を記録した。

<strong>楽天会長兼社長 三木谷浩史</strong>●1965年、兵庫県生まれ。一橋大学商学部卒業後、日本興業銀行入行。93年ハーバード大学にてMBA取得。97年エム・ディー・エム(現・楽天)を設立。現在、厚生労働省による医薬品のネット販売規制に反対の狼煙を上げている。
楽天会長兼社長 三木谷浩史●1965年、兵庫県生まれ。一橋大学商学部卒業後、日本興業銀行入行。93年ハーバード大学にてMBA取得。97年エム・ディー・エム(現・楽天)を設立。現在、厚生労働省による医薬品のネット販売規制に反対の狼煙を上げている。

ただ、通販業界全体を見ると、必ずしもすべての企業が好調とは限らないようだ。国内通販各社でつくる日本通信販売協会の調査によると、買い控えの影響により、主要135社の月次売上高はこの1年あまり、前年割れが目立つという。

一方、楽天は売上高が前年比約17%増、営業利益は同約90%増と突出している。売れる秘密はどこにあるのか。

「業績が伸びているのは不況で家で過ごす時間が長くなり、商品の価格にも敏感になってきた消費者にネット通販のほうが安く、利便性が高いと認知されてきたことがベースにあるのでしょう。そのときユーザーに選ばれるかどうか。成否を分ける大きなポイントは、商品の質は当然として、そのうえでサービスの質をいかに高められるかです。

楽天では出店者さんも、うちの社員もものすごいスピードで変化する世の中のニーズに応えるため、本当に日々努力をしています。その中でわれわれが利便性に加え、一貫して追求したのは“ショッピング・イズ・エンターテインメント”、買い物をする楽しさでした。

エンターテインメントは根源的には人と人とのコミュニケーションから生まれます。買い物をする楽しさも同じで、売り手と買い手の間のインターフェースの部分でコミュニケーションをどれだけ濃密にできるか。楽天ではこのコミュニケーションが非常に活発で、商品を購入したユーザーからのレビュー(感想)が累計2300万件に上る。驚異的な数字です。ユーザー同士もレビューを互いに読むことで体験を共有できる。ほかのユーザーの感想は誰もが関心があり、これがまた買い物の楽しさを生みます。

コミュニケーションはリアルな世界より、ネット上のバーチャルな世界のほうがはるかに簡単に生まれる。その結果、ほかにない特色をもちながら、大量プロモーションによる大量販売という既存の方法になじまず、これまであまり多く売れなかった商品がレビューの評判のよさで売れるようになる。楽天でも地方の出店者のほうが好調です。大量消費型から少量多品種型へとマーケットが変わっていく。巣ごもり消費ばかりでなく、その大きな流れに着目すべきです」