リアルな世界よりなぜ、ネット上のほうがコミュニケーションが活発になるのか。現実世界では職業や肩書、年齢、性別などの枠やしがらみがコミュニケーションの障壁になりがちだ。一方、ネット上ではそれが取り払われ、同じユーザーとして「買い物を楽しむ」という“動詞”で容易につながることができる。実際、女性ユーザーからは「楽天は楽しい」という声が多く寄せられるという。
「楽天が楽しさを追求するのは、ネット通販であっても、街の市場のような活気あふれる場をつくりたいという思いがあるからです。楽天市場と名づけたのもそのためです。
私は忙しくても毎月1回は現地滞在24時間というハードな日程を組んででも海外へ出かけ、各地の市場を回ったりします。それも、市場の楽しさ感覚を自分で体感し、忘れないためです。
街の市場は多様なものが交じり合い、折り重なって楽しさを醸し出します。楽天のショッピングページも種々雑多な情報があふれています。その点、同じネット通販でもアマゾンのシンプルで機能的なページとは対照的です。それはビジネスモデルの違いを端的に表しています。
自ら売り手になるアマゾンのページでは商品が中心になる。だから、情報の機能性が重視されるのでしょう。一方、場を提供する楽天のページでは2万6000店に上る出店店舗の店長が中心になります。店長が何を考え、どんな商品をどのように売っていくかによって、店舗はそれぞれ違ってくる。店長のパワーが楽天市場の魅力を左右するのです。
そこで、楽天では店長を支援するため、社内ビジネススクールともいうべき楽天大学を本部に開設し、過去の成功・失敗事例から体系化したさまざまなノウハウを提供します。
受講した店長の店は平均売上高は未受講店の3倍を超えるというデータも出ています。単にシステムを提供するだけでなく、出店される各地域の中小企業と楽天との強い結びつきが、活気あふれる場をつくり上げているのです」
アマゾンやヤフーと決定的に違うところは
楽天では昨年、正午までの注文を翌日配送するサービス「あす楽」を開始するなど、物流面からも出店店舗の支援を進める。地域の中小企業にとって地理的なハンディからも解放されていくわけだ。