かたつむりの目は切っても生えてくる

私が動物の「目」というと思い出すのはカタツムリである。童謡の「かたつむり」に「つの出せ、やり出せ、目玉出せ」という歌詞があるが、カタツムリの目は、ツノのように見える触角の先端部分についている。しかも、その目は切り落としてもまた生えてくるという非常に便利な機能がついている。

切っても生えるといえば、トカゲの尻尾だが、切り落とした部分が元の形に戻るには1~2年かかるといわれているうえに、トカゲ本体のダメージも大きいため、敵に襲われるなど生命の危険にさらされた場合など、一生に一度やるかやらないかの大技だという。

その点、カタツムリの目は2週間で元に戻るという。子どものころ、カタツムリの目が再生するという話を聞いて、どれくらいで戻るのか気になり、実際に切り落としてみたことがある。生えてくるところが見たかったが、さすがに2週間ずっと観察しつづけることができなかったので途中であきらめた。一度くらい再生の瞬間を見てみたいものだ。カタツムリにはかわいそうなことをしたと思うが、彼らの目は明るいか暗いかを感じることができるくらいでほとんど見えていないのだという。乾燥を避けるため、日なたを避けられるように明暗がわかれば問題ないらしい。目玉がついている大触角を動かして周囲の様子を認識しながら移動する。ヒトの目の役割に近いのは、むしろ大触角のほうかもしれない。

比較的簡単に再生するからなのか、目玉が災難に見舞われている種類のカタツムリもいる。日本にも生息するオカモノアラガイというカタツムリの触角にはロイコクロリディウムという寄生虫がつくことがある。寄生されたオカモノアラガイの触角は緑色に腫れあがってイモムシのようになり、イモムシを主食とする鳥に食べられてしまう。寄生虫は移動した鳥の体内で産卵。その卵が入った糞をオカモノアラガイが食べて、同じことが繰り返されるというわけだ。

ちなみに、カタツムリは歯も再生する。舌のようなものの周囲に生えた約2万本の歯(「歯舌」と呼ばれる器官)で、植物の実や葉を削って食べる。すり減ってもまた生えてくるので虫歯知らずだ。梅雨時に見かけることの多い動物だが、不思議な能力を秘めているものだ。