今年のスモーカーズコーナーも、これが最後になった。毎年、毎年、テーマを少しずつ変えながら、タバコをテーマにエッセイを書き、そのあとで、本稿にうつるというものだ。今年も大きな反響を頂いており、読者諸賢には感謝申し上げる次第だ。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/TkKurikawa)

※本稿は、プレジデント誌の連載「リーダーの掟」に一部加筆したものです。また12月19日9時の配信時、記事の後半部分が別の記事と差し替わっていました。訂正します。

以前は、タバコが持つコミュニケーション能力を高めるという機能について話をしていた。タバコ部屋でもいいし、喫煙所でもいい。これだけ喫煙者が虐げられている状況で、喫煙者同士、話が合わないはずがない。自然と他部署や他社との垣根を超えたネットワークができあがる。喫煙時間が無駄だという経営者もいるようだが、黙々とパソコンに向かって仕事に打ち込めということなのだろうか。そんな光景は、私のような古い人間には非人間的なように思えてしまう。

そんな話をしていると、今度は、タバコが体に悪いので禁止しろという話をしてくる人たちがいた。確かに、私はタバコを(精神的にはひじょうに落ち着くが)体にいいものだと思って吸っているわけではない。しかし、タバコと同じぐらい体に悪い影響を与えているものなど、世の中にいくらでもあるだろう。そう考えて調べていくとお酒があった。

「お酒はほどほどにすればいい」というのは迷信で、少量でも体に悪いことが英国のがん研究所で発表された。各種がんとの関係も指摘されている。挙げ句に、DVや交通事故などの社会的損失もタバコの倍。これでどうして、タバコばかりが厳しい規制を受けるのか、と考えていたら、世界保健機関(WHO)をはじめとする世界的潮流は、「お酒も規制」のようだ。

タバコに腹を立てている諸君に、今一度、聞きたい。タバコだけ規制されるのは不公平だと思わないのか。そして、このままタバコとお酒を禁止してしまう社会でいいのか。私はお酒をほとんど飲まないが、それでもお酒は飲んでいいと思う。分煙をより進めるという前提で、日本は、他者に対して、寛容な国であってほしい。そんな願いを込めて、最終回に進みたいと思う。