極限状態の私への無慈悲なる拒絶
私はとても怒っている。先日、コンビニのローソンがトイレを貸してくれなかったのだ。私は、どうしても移動中にトイレへ行きたくなり、ローソンへ駆け込み、「トイレ、貸してください」と言うと、アジア系の店員が、「ありません」とハキハキと大声で応じた。
嘘をつけ、店舗にトイレがないわけがない。じゃあ、君たちは仕事中にトイレへ行きたくなったらどうするんだ、とハラワタが煮えくり返ってしまった。それぐらいの緊急事態だったのだ。
こちらは極限状態で、すがる気持ちで入店しているのに、どういう了見なのか。それからはコンビニに入るたびにトイレを客に貸すか、貸さないかをチェックするようにしているが、私が入店した範囲では、ローソンではトイレを貸さない率が高いように思う。もしも、物さえ売れればいい、顧客の人生がどうなろうと知ったことではない、という考えなら、企業努力が足りないのではないだろうか。
調べてみると、バックルームにある金庫などお金を管理する場所の近くや、その動線上にトイレがあり、防犯上の理由で貸せないという場合もあるようだが、一回のトイレ掃除には、24分かかるというデータがある。やはり、最近の人手不足も影響しているようだ。
1分1秒でも、従業員の手間暇を削り、なるべく少ない人数で店舗を回したいという経営者の気持ちもわからなくはない。従業員に日本人を多く雇えず、外国人労働者が多いのも、業界として人材確保に苦戦をしている証拠だろう。
11月末、成り行きが注目されていた出入国管理法改正案が衆院本会議で可決された。この改正案は、外国人労働者の新たな在留資格を設けることで、建設、介護、農業などの分野での人手不足解消に対応するものとして期待される一方、「事実上の移民政策ではないか」「外国人労働者の権利が守られていない」などと反対意見も多く賛否両論が拮抗している。衆議院の審議での、こうした反対意見や疑問への対応が、国民が納得できるものだったかというと不満が残る。私が心配しているのは、コンビニのアルバイトをしている程度では、放っておくと貧困層になってしまうということだ。財界の要請が「人手不足の解消」というよりも「安く働いてくれる人材不足の解消」というものであれば、日本の将来に禍根を残すのではないだろうか。外国人労働者の本国よりもマシな状態であったとしても、これから長期間日本に滞在するのであれば、きちんと給料をあげられる職種の人材を日本に招く政策を打ち出してほしい。
とは言うものの、いま日本中が人手不足に悩んでいることは紛れもない事実だ。経営状況は悪くないのに、人手不足で倒産に追い込まれた企業は年々増加している。東京商工リサーチの調査によると、2018年1~9月、人手不足を理由に約300社が倒産、年末までに400社に達する勢いだ。帝国データバンクの2018年度上半期のまとめでも同様の傾向が顕著で、人手不足倒産が多い業種は「サービス業」、細かい分類では「道路貨物運送」「老人福祉事業」「木造建築工事」「労働者派遣」となっている。
こうした業界では人材を高齢者に頼らざるをえない。東京都は20年の東京五輪に向けて建設ラッシュだが、ビルの工事現場に行くと、高齢者が多いのに驚かされる。総務省「労働力調査(17年)」によれば、建設業に従事する人の55歳以上の割合は、33.8%、29歳以下は10.8%だ。特に交通整理の方はヘルメットの下の顔をのぞくと、おじいちゃん、おばあちゃんばかりになっている。
こういう働き手の取り合いのような状況になると、人材派遣業ばかりが儲かることになっていく。介護業界では一人の人材を雇うのにかかるコストは、50万~80万円レベルにまで到達しているという。これでは、国がいくら政策的に介護業界にお金が流れるようにしても、「介護人材派遣業」という、介護業界のようでいて、実はまったく違う人材派遣業界にお金を流しているだけの状態になっている。介護人材派遣業の規制が急務だ。