“風邪は万病のもと”――といわれる風邪。正式には「風邪症候群」という。鼻から喉である咽頭(いんとう)までの上気道に急性上気道炎を起こす病気で、90%以上がウイルス感染が原因である。
風邪を引き起こすウイルスは、ライノウイルス、アデノウイルスなど200種類以上あり、インフルエンザもそのひとつだが、症状にも感染力にもだいぶ違いがあるので、インフルエンザは特別に扱われている。
年間を通して、上気道炎の症状である「咳」「くしゃみ」「鼻づまり」「鼻汁」「喉がいがらっぽい」などで医療機関を受診した患者のうち、風邪症候群が50.7%。風邪と思っても風邪ではなく、31.4%が呼吸器感染症、6.4%がその他の感染症、11.4%が不明である。
上気道炎症状を起こすのは、風邪以外に咽頭炎、溶連菌感染症、気管支炎、副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎、逆流性食道炎、気管支ぜんそくなどがある。上気道炎症状を起こす見逃せない疾患には、肺ガン、甲状腺ガン、肺炎、肺結核、心不全、インフルエンザなど。緊急性の高い疾患としては急性喉頭蓋炎、無顆粒(むかりゅう)球症、免疫不全など。
この時季には、風邪と思っていてインフルエンザ、インフルエンザと思っていて、実は風邪ということが多い。
38度を超える高熱、筋肉・関節痛、全身倦怠感、頭痛などの症状があるとインフルエンザが疑われ、医療機関では迅速検査キットを使う。15~20分くらいで診断がついてしまう。
インフルエンザであれば、治療薬として「アマンタジン」と「ノイラミニダーゼ阻害薬(内服薬のタミフルと吸入薬のリレンザ)」が使われている。アマンタジンはインフルエンザのA型のみに有効なのに対し、ノイラミニダーゼ阻害薬はA、B両型に効く。ただ、タミフルについては発症から48時間以内に使うことが大事で、それを超えると効果は薄い。
一方、「風邪」、いわゆる普通感冒と診断されると、やはり薬物治療が基本。ただし、今のところ風邪のウイルスを直接叩く薬はない。そのため、症状を抑える対症療法になる。
解熱薬はアセトアミノフェンが使われる。アスピリンやNSAIDs(ボルタレン、ポンタールなどの消炎鎮痛薬)はインフルエンザ脳症やライ症候群との関連が示唆されているため、不適当。抗菌薬については使うケースが限定されている。溶連菌と一部の副鼻腔炎に対しては抗菌薬のアモキシシリンが第1選択肢となっている。肺炎を引き起こしているときは、炎症を起こしている菌に有効な抗菌薬が使われる。
ただ、普通感冒では、あまり薬を使わずに安静にして栄養のある物を摂っていると、まず1週間程度で回復する。
食生活のワンポイント
生活のポイントは「室内は湿度60%程度に保つ」「うがい、手洗いを励行」「マスクをする」。そのうえで、食生活のワンポイントが重要となる。
(1)水分の充分な補給!
発熱、下痢のあるときは脱水症状や電解質のバランスが乱れる危険があるので、栄養価の高い流動食のほか、スープ、ジュース、スポーツドリンクなどで水分とミネラルを補給する。
(2)エネルギーを充分補給する!
発熱を起こすと、エネルギー消費量はグッと上昇する。が、食欲不振。そんなときはあっさりとした「お粥」になってしまう。栄養をしっかり補うために、牛乳、ヨーグルト、蜂蜜など栄養があり食べやすい物を摂るよう工夫しよう。
(3)ビタミンCを充分に摂取!
風邪の予防のみならず、回復にも欠かせないビタミンC。充分に摂取するため、ミカン、イチゴ、ネーブル、キウイフルーツなどの果物を食べよう。