2006年11月から日本各地でまん延しているノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎。厚生労働省は12月15日までに、青森・沖縄県を除く45都道府県に「警報」を発令した。

それほど患者は急増している。国立感染症研究所が全国約3000カ所の小児科から取った集計では、06年は100万人を突破。推定患者数は子供だけで300万人を突破しているという。

発症のピークは12月から3月なので、2007年は1カ月以上も早くピークがきている。冬休み中は多少減少するものの、それ以降3月いっぱいまでは気を抜けない。

ノロウイルスは日本での食中毒原因ウイルスナンバーワン。

1968年にアメリカ・オハイオ州ノーウォークの小学校で集団発生した胃腸炎の原因となったウイルスで、地名をとってノーウォークウイルスと名付けられた。その後、02年の国際ウイルス命名委員会によって、ノロウイルスと正式決定した。

このノロウイルスの潜伏期間は1~2日。乳児から老人まで広く感染するが、一般的には症状は軽い。

が、免疫力の低下している人、慢性疾患を持っている人や老人、さらに乳幼児や小児では重症化し、生死にかかわることもある。

症状は吐き気、嘔吐、下痢が中心で、このほかに頭痛、悪寒、筋肉痛、発熱、咽頭痛などを伴うこともある。

軽症ゆえに「風邪かな?」「体調を崩したかな?」程度に考え、放っておく人も少なくない。が、やっかいなのは症状が治まった後も3~7日程度は、便の中にノロウイルスがまざっている点である。

手洗いをしっかり行わないと手指に付着したノロウイルスがヒトからヒトへと感染。また、嘔吐物にまざっているノロウイルスが飛沫感染したり、乾燥して浮遊し、それが口に入って感染することもある。

さらに、便と一緒にノロウイルスは汚水処理場に。浄化処理をかいくぐって河川から海へ。そこでノロウイルスは二枚貝に取り込まれて蓄積される。

その二枚貝を生で食べると再び人体に入って感染を繰り返してしまう。食中毒である。

治療は抗ウイルス薬がないため、対症療法のみというのが現状である。

下痢止めは、ウイルスを体内にとどめることになるので、けっして服用してはいけない。嘔吐に対しては吐き気止め、嘔吐・下痢による脱水状態には経口輸液薬、経静脈輸液が中心として用いられている。

 

食生活のワンポイント

感染性胃腸炎の予防は、次を徹底してほしい。

(1)二枚貝は生では食べない!
二枚貝とはカキ、アサリ、ハマグリ、シジミなどだが、いずれも十分に加熱すれば問題はない。

(2)二枚貝は85度以上で最低1分加熱!
フライを作るときなどに、中をふんわりトロッとさせるために、中に火を通しすぎないようにするケースがある。これではウイルスが死滅しない。美味しさよりも安全を考えて作るべきである。

(3)手洗いの励行!
外から帰ったとき、トイレに行ったとき、食事の前などは必ず手洗いをする。ノロウイルスは流水では死滅しないが、洗い流すことはできる。2次感染予防になる。

(4)調理用品などの消毒!
まな板、庖丁、食器、ふきんなどは85度以上の熱湯で1分間加熱消毒。もしくは、家庭にある次亜塩素酸ナトリウムなどで消毒する。次亜塩素酸ナトリウム消毒液は、市販の塩素系漂白剤を250倍に希釈して作ることができる。5リットルの水に漂白剤を20ミリリットル入れる計算である。