縁は力を抜くことで気づくもの

下手に力を込めると、そのこと自体に「多縁」(用事が増えて忙しくなること)となり、本人に彼氏が見つかるというより、人様の仲人になってしまうのではないか。本当に彼氏を探したいなら、盛り場やパーティーなどに出かけたほうがよいのではないか、などと訝っていたのだが、ある日、私は気がついた。

もしかしてこれこそパワー、つまり「チカラ」ではないか。古来「チカラ」の「チ」は「血」も意味している。ゆえに『古典基礎語辞典』(角川学芸出版 2011年)は「チカラ」をこう語釈していた。

チは、体力や気力の源泉と考えられた血液の意のチ(血)。カラは、ウガラ・ハラカラ(同胞)・ヤカラ(族、一家の親族の意)のカラと同じで、血の筋の意味を表す語という説があるが、確かではない。

不確かながら、「チカラ」とは血族のこと。血縁をつなぐわけでまさに縁結び。パワースポットとはすなわち縁結びのスポットなのだ。

よくよく考えてみれば物理学の起源である「ものを押したり引いたりするときの筋肉感覚」(マックス・ヤンマー著『力の概念』髙橋毅、大槻義彦訳 講談社 1979年)も生きているからこその感覚で、その元を辿れば両親の縁結びであり、それこそが「力」の究極の起源ではないだろうか。

小さな出雲大社が見守るショッピングセンター

近隣のパワースポットで私の目を引いたのは「ラゾーナ出雲神社」だった。川崎駅に直結した巨大ショッピングセンター「ラゾーナ川崎プラザ」の4階屋上に「出雲神社」があるという。このショッピングセンターは東芝の堀川町工場の跡地に建てられており、かつてそこに祀られていた出雲神社をそのまま移設したらしい。

開放感たっぷりの屋上に静かに佇む神社で、今年出会うステキなご縁をお願いしてみてはいかがですか。(『ハマ・サキ マガジン』2017年1月・2月号 ナイス)

同社はかの有名な出雲大社の分社。分社がなぜそこにと思いつつ、とりあえず私も出かけてみることにしたのである。日曜日の午後2時。ラゾーナ川崎プラザのイベント広場ではキラキラと輝く衣装をまとった女子たちがダンスを披露しており、大変なにぎわいだった。人混みを抜けるように、まず総合案内所に向かう。そして神社への道順をたずねると、「出雲神社は出雲大社の分社ですから、効果としては一緒だと思いますよ」と微笑まれ、エスカレーターを乗り継いで4階の屋上広場へ。

ショッピングセンターは中央が吹き抜けの構造になっており、確かに開放感はあるのだが、見回してみても神社がない。そこでウッドデッキの通路を歩いてみると、その脇に小さな鳥居が建っていた。