「帯状疱疹」という病名は、美智子皇后が経験されたとあって、認知度はかなり高い。ところが、どのような病気で、どんな治療をするのかとなると、知っている人はグンと少なくなる。

帯状疱疹とは水痘ウイルス、つまり、水ぼうそうのウイルスの再活性化で起こる疾患。水ぼうそうには、多くの人は子供の頃に感染し、抗体ができて治ってしまう。正確には治るのではなく、ウイルスは知覚神経の中に入り込んで移動し、奥深い神経節でじっと眠っている。

それが、病気をしたり、疲れがたまったりして免疫力が低下すると、ウイルスが神経節で増殖し、神経を伝わって皮膚に赤みを帯びた小水疱をつくる。知覚神経は体表を半周しているので、小水疱は左右いずれかに生じる。

この小水疱の出る4、5日前から神経が障害されるので、多くの場合、痛みやピリピリした痒みを自覚する。痛みの度合いは人によって異なるが、頭痛のひどさから脳腫瘍を疑って脳神経外科へ行く人もいる。痛みの出る場所によっては耳の聞こえが悪くなったり、顔面神経麻痺になることもある。

帯状疱疹は人口10万人あたり年間300~500人が発症するが、重症の場合は必ず皮膚科で全身検査を行う必要がある。重症の場合、ガンやエイズといった免疫力を低下させる疾患が起きていることもあるからだ。

軽症の場合は、毎年健診を受けていれば、まずは問題ないと思われる。

放っておいても約1カ月で自然に治るが、これは決してよいことではない。自然治癒にまかせた場合、3カ月もすると「帯状疱疹後神経痛」といわれる後遺症に悩まされる可能性が高くなるからである。そのリスクを極力低くするためには、帯状疱疹の発疹が出て3日以内に治療を開始すべきである。

治療法は薬物療法。抗ウイルス薬の塩酸バラシクロビル(商品名・バルトレックス)の経口薬が多く用いられる。この場合、1日3回、8時間おきに1週間服用する。有効性が高い療法である。

また外用薬は抗菌外用薬を用いて、皮膚の潰瘍やびらんをそれ以上悪化させないようにする。このほか、不眠には睡眠薬、顔面に出たときは早くから眼科、耳鼻咽喉科と協力して治療を行う。

だが、最も良いのは、入院施設のある病院であれば、1週間程度入院して治療を行うことである。抗ウイルス薬の点滴静注(静脈注射)、そして、安静を保つことが免疫力の低下をよりスムーズに改善してくれるからである。

 

食生活のワンポイント

帯状疱疹は免疫力の低下が原因なので、何か原因疾患があるときはそれを治療する必要があるが、基本は免疫力回復に力を注ぐことになる。

食生活ではバランスが肝心だが、より免疫力の回復を早めるには、「ラクトフェリン」「β―グルカン」「セレン」などを、より積極的に採るべきである。

●ラクトフェリン
母乳中に多く含まれて、免疫力アップに働くのがタンパク質のラクトフェリン。母乳以外にも、哺乳動物のミルクには多く含まれているので、牛乳をしっかりと飲むようにする。また、赤ちゃん用の粉ミルクにはラクトフェリン入りが多いので、それを飲むのも良い。

●β―グルカン
糖質とタンパク質が結合した多糖類の1種がβ―グルカンで、きのこ類に多く含まれている。まいたけ、えのきだけ、干し椎茸などに多い。

●セレン
セレニウムといわれるミネラルのひとつがセレン。免疫機能向上に強力に働く。カキ、タラ、イワシといった魚介類のほか、ゴマ、ニンニク、アスパラ、トマトなどに多く含まれている。