“病気を持たない人間はいない”といっていいほど、世の中には病人が多い。3人寄れば“痔主(じぬし)”が1人、4人に1人は腰痛に悩み、5人に1人が高血圧。その高血圧に匹敵するのが「水虫」である。「ジャパン・フット・ウィーク研究会」が行った実態調査によると、水虫患者の数は約2470万人。
水虫には4種類あり、なかでも治りにくいのが、今回取りあげる「爪白癬(つめはくせん)」、いわゆる爪水虫である。
水虫はカビ(真菌(しんきんきん))の一種、白癬菌が感染して起こる。爪白癬はその白癬菌が爪に感染したものである。爪は白く濁ったり、黄色く濁ったり変色し、肥厚したり、ボロボロになったりする。
この頑固な爪白癬は、昔は少ないと思われていたが、実態調査では水虫患者の2人に1人が爪白癬に罹っていることがわかった。もちろん、軽症の患者も多いし、爪には知覚神経がないため、他の水虫のように痒い、痛いといった症状がでないので気づきにくいのである。
なまじ気づいたとしても、以前は内服薬を1年間も服用する治療だったこともあり、副作用の心配や根気のなさが問題となり、完治に結びつくケースが少なかった。ところが、2004年2月に「イトリゾール」による「パルス療法」が承認され、治る患者が増え始めた。
治療は、まず確定診断からスタート。問診、視診、触診と、医師は患者から状況を聞き、実際に眼で見て、触って水虫と絞り込む。最終的には顕微鏡検査で、白癬菌を発見できて、それが爪であれば爪白癬と診断される。そして、肝機能障害の有無を調べ、問題のない場合に、注目のパルス療法が開始される。
イトリゾールという薬8錠を1日2回に分けて、1週間毎日服用する。次の3週間は服用を休む。これを1クールとして、3クール行う治療方法である。
この治療であれば、薬の服用は1年間ではなく、わずか21日間で済んでしまう。服用回数が減るので、患者にとっては治療が楽なうえに、薬の飲み忘れもなくなる。肝機能に対する副作用については、月に1回は血液検査を行ってチェックすることが重要である。
3カ月で治療は終了するが、その後も爪に薬が残っており、3カ月の時点で治っていなくても、その後治癒するため、6カ月時点での治癒率は70~80%ときわめて良い成績となっている。
爪白癬の治療は、パルス療法以外に、6カ月間、毎日薬を服用する方法もある。いずれにせよ、夏に美しい裸足を見せたいなら、今から治療を始めるべきである。
食生活のワンポイント
水虫菌である白癬菌が皮膚の角質層に入り込んだり、爪に入り込むのは、高温多湿、清潔でないということのほかに、皮膚の健康と免疫力が関係している。
●健康な皮膚を保つには“ビタミンA”
ビタミンAには皮膚や粘膜を健康に保つ働きがあるので、ここで外からの菌などを防いでくれる。そのビタミンAが豊富なのは鶏・豚・牛レバー、卵、牛乳、ウナギ、銀ダラなど。また、体内に入ってビタミンAとして働くものにベータ・カロテンがある。多く含まれているのは、ブロッコリー、ホウレン草、春菊、トマト、青じそ、人参、パセリ、ニラなど。
●“ビタミンE”で血液循環をアップ
ビタミンEには活性酸素を除去する抗酸化作用によって、血液をサラサラにして体の末端の細胞まで充分に送る作用がある。これが細胞の活性化につながり、菌の侵入を防いでくれる。イワシ、タラコ、カボチャ、キウイフルーツ、アーモンド、ピーナツ、木綿豆腐などに豊富に含まれている。
●免疫力アップに不可欠な“ビタミンC”
感染症に罹りにくくしてくれるものとして有名なのがビタミンC。レモン、イチゴ、ブロッコリー、小松菜、ピーマン、ニガウリ、キャベツなどに豊富に含まれる。