消化器外科で手術の技量の高い医師にまかされるのが、食道ガンである。それは、食道が大動脈、心臓、気管支といった重要臓器や神経に接しているためで、極めてリスクの高い大手術になるからだ。今日でも手術死亡率は2%もあるが、それでも手術の成績は向上し、5年生存率は50%を超えるようになってきた。
食道ガンの病期も他の胃ガンなどのようにガン細胞の深さ、転移の有無により0期からIV期に分けられる。その病期と治療法を紹介しよう。
0期 ガンが粘膜内にあり、リンパ節転移なし。〔治療は内視鏡的粘膜切除術〕
I期 ガンは粘膜内にとどまっているもののリンパ節に転移。または、ガンは粘膜下層に達しているが転移なし。〔治療は手術、放射線療法〕
II期 ガンがわずかに外膜に出ている。また、周囲のリンパ節にのみ転移。〔治療は手術、化学・放射線療法〕
III期 ガンが食道の外に顔を出している。また、少し離れたリンパ節にまで転移。〔治療は手術、化学・放射線療法、化学療法〕
IV期 ガンが周囲の臓器に広がっている。また、遠くのリンパ節や腹膜などにも転移。〔治療は化学・放射線療法、化学療法〕
病期によって治療法は異なるが、やはり早期発見が何より重要。早期食道ガンであれば、「内視鏡的粘膜切除術」ができるからだ。内視鏡的粘膜切除術は、患者の口から内視鏡を入れて行う治療法で、胃ガンにおいても早期ガンに活躍する。実に体に負担の少ない、患者に嬉しい治療法である。
まずは、ルゴール液で食道ガン部分のみを白く浮き上がらせ、ガン組織下に生理食塩水を注入。スネアといわれるループ状のワイヤを浮き上がったガン部分にかけ、スネアを締める。まさに首を締めるような形になる。そして高周波電流を流して焼き切る。次に内視鏡の先端にキャップをつけ、ガン組織をキャップに吸引して取ってくる。これが「吸引法」。
その吸引法のひとつとして、幕内チューブを使って行われるのが「EEMRチューブ法」である。幕内チューブは食道ガン治療の世界的リーダーである東海大学医学部付属病院の幕内博康病院長が開発したもので、ガン組織を最も広く切除できる。
このほかに、「フックナイフ(切開・はく離法)」や「レーザー治療(PDT)」なども行われている。どれも体にやさしい治療なので、0期で食道ガンを発見してほしい。そのためにも、内視鏡検査を年に1回は行うべきである。
食生活のワンポイント
(1)あまり熱い食べ物は避けよう!
のどが火傷しそうなほど熱い物を食べる人は食道ガンになりやすいことがわかっている。たとえば、和歌山県などではアツアツの茶粥をスッスーッと食べる習慣がある。そのため、この地域は食道ガン患者が多い。
(2)天ぷら、揚げ物などはほどほどに!
天ぷらなどの油物は胸やけに結びつく。大食漢、肥満の人も同じ。この胸やけが頻繁に起き続け、長い年数がたつと食道ガンを生み出すリスクが高くなる。
(3)アルコール度数の高い酒は避けよう!
お酒の中でアルコール度数が高いのは、ウイスキー、ブランデー、ウオツカ、焼酎など。水割りにしたりして飲むと良いが、ストレートで飲むと食道粘膜を刺激し、長い期間続くと食道ガンを生み出してしまう。
(4)お酒を飲むとすぐ顔が赤くなる人は、お酒はごくごく少量に!
このタイプはお酒は弱いが飲もうとすると飲める。が、食道ガンになりやすいと研究報告がなされている。
(5)辛い食べ物、あまり冷たい飲食物、タバコは避けよう!
これらの食べ物や嗜好品も食道ガンリスクが高いことがわかっている。