オシッコがしたくなってトイレの行列に並んだものの、自分の前の人がなかなか終わらなくて、漏らしそうになったといった経験をした人は多いだろう。実は、前の人は「前立腺肥大症」と思って、まず間違いないだろう。

前立腺肥大症の症状は「排尿に時間がかかる」以外にも数多い。「残尿感がある」「トイレに行く回数が多くなる」「夜中に何度もトイレに行く」などを訴える。

前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の出口にあって精液の一部、前立腺液を分泌している。クルミ大で尿道を包むようにあり、外側と内側の外腺、内腺に区別され、加齢に伴って組織が変化する。

その変化は内腺に出る。肥大しなくても硬くなり、50歳くらいから症状として出てくる人が多い。

「頻尿」「夜間頻尿」などの排尿障害で泌尿器科を受診すると、まず、「I-PSS(国際前立腺症状スコア)」検査が行われる。合計が7点以下なら経過観察、8点から19点では薬物療法、20点以上は手術も考えられる。

加えて、「尿流量測定」「超音波検査」「PSA検査」「残尿測定」「直腸内指診」が行われ、最終診断が出る。

経過観察を除いて第1選択肢となるのが薬物療法。α1-ブロッカー、抗アンドロゲン薬、植物製剤などがあり、今日の主流はα1-ブロッカーである。

前立腺肥大症になると前立腺の内腺組織が場所によって肥大化する。それとともにα1という神経が増えてくる。α1という神経には、尿を漏らさないように尿道を絞る働きがある。α1-ブロッカーを服用することで、自律神経に作用して絞りを緩めてくれるのである。

この薬はよく使われているが、高血圧の治療薬を服用している人は主治医とよく相談する必要がある。高血圧治療にα1-ブロッカーが使われ、血管が収縮するのを抑えている。それと同じ作用が前立腺部で起こることにより、血圧低下による立ちくらみが副作用として表れるからである。

そして、手術療法。標準治療は「経尿道的前立腺切除術(TURP)」と呼ばれるものだ。直径8ミリの内視鏡を尿道に挿入して、肥大した前立腺の内部組織を先端の電気メスを使って削り取る。下半身麻酔で行われるこの手術は、開腹しないので回復が早い。施設によっては1泊2日で行うところもあるが、基本は4泊5日程度。

このほかにホルミウムレーザーを使った「前立腺核出術(HoLEP)」と「前立腺蒸散術(HoLAP)」、高出力のKTPレーザーを使った「光選択的前立腺レーザー蒸散術(PVP)」があるが、まだ受けられる施設は少ない。

 

食生活のワンポイント

●食生活のワンポイント

加齢に伴って前立腺の組織が変化して起こる前立腺肥大だが、この原因は男性ホルモンと女性ホルモンのバランスの変化といわれてはいるが、まだはっきりとはわかっていない。京都府立医大の研究によると、前立腺肥大症の人は「毎日肉を食べ、牛乳を飲むものの野菜の摂取量が少ない」という。それを考慮して、以下をより積極的に行うことで多少の予防に結びつくと思われる。

●野菜を摂ろう!

野菜を多く摂取することによって、抗酸化パワーを発揮するとともに、ビタミンCも十分に摂れる。なかでも、より色の濃い野菜やタマネギなどの硫黄化合物の多い食品が良い。ピーマン、ホウレンソウ、ブロッコリー、緑茶、小松菜、ナス、タマネギ、ラッキョウ、ニラ、長ネギ、ニンニク、エシャロットなど。

●大豆製品を摂ろう!

大豆イソフラボンはホルモンのバランスをととのえ、ホルモンが影響する疾患を抑える働きがあるといわれている。大豆、みそ、納豆、油揚げ、厚揚げ、湯葉、豆乳、おから、枝豆、豆腐、凍り豆腐など。