日本のガン死亡者数で最も多いのが肺ガン、次いで胃ガン、そして第3位が大腸ガンである。食生活の欧米化に伴って増えており、2003年が3万8909人、15年ごろには胃ガンを抜くと推測されている。

その大腸ガンの治療には、まずは正確なガンの浸潤度合いをしっかり知ることが重要だ。大腸の壁は、内側から「粘膜」「粘膜下層」「固有筋層」「漿膜(しょうまく)下層」「漿膜」の5層からなっており、その深達度から大腸ガンの進行度は6段階に分類されている。

最も内側の粘膜内にとどまっているのが「mガン」。ガンが粘膜下層に入っていると「smガン」。「mpガン」は固有筋層に、「ssガン」は漿膜下層にまでガンが入っている。「seガン」になるとガンが漿膜の表面に露出しており、最も重症の「siガン」ではガンが大腸の壁を突き抜けて隣接する臓器に浸潤している。

さらにsmガンは1から3に分けられ、sm1は浸潤度が少ないので早期ガン。sm2、sm3はリンパ節転移もありうるので、リンパ節を取る必要がある。

これらの進行度に合わせて「内視鏡的切除術」「腹腔鏡下切除術」「直腸に対する局所切除術」などの「縮小手術」、もしくは「開腹手術」が行われる。

mガンやsm1ガンであれば、内視鏡を使って内視鏡的切除術を行えば根治できたことになる。施設によっては100倍のみならず、500倍に拡大できる内視鏡を使い、その場で良性、悪性を判断して切除の有無に結びつけている。

sm2ガンやsm3ガンはリンパ節転移があっても、すぐ近くのリンパへの転移がほとんどなので、縮小手術が選択される。縮小手術には直腸に対して行われる「経肛門式」「経仙骨式」、直腸以外で行われる腹腔鏡下切除術がある。直腸の腹腔鏡下切除術はまだ一部の施設でしか行われていない。

腹腔鏡下切除術では腹部の4カ所程度に小さな孔(あな)を開け、モニターを見ながら術者はガン部分を切除する。そして、腹部を6センチ程度切開して切除した部分を取り出す。

腹腔鏡下切除術には「腹部の傷跡が小さい」「回復が早い」「腸の動きが早い」といったメリットはあるが、「手術時間が長い」「ときに大量出血がある」「電気メスで腸に孔が開くことがある」といったデメリットもあるので、専門医と充分に話し合うことが大事である。

今日ではmpガンでも腹腔鏡下切除術を行っている施設もある。が、基本的に進行ガンには開腹手術である。

進行ガンの手術後には、補助的療法として化学療法が行われる。どのような状態かを主治医と納得いくまで話し合い、しっかりとした治療計画を立てていくべきである。

 

食生活のワンポイント

日本人の脂肪摂取量は、昭和30(1955)年に8.%だったのが、昭和63年には25.5%と3倍に増加、今日ではさらに増えて30%近くに達していると思われる。

このような食生活が大腸ガンを増やしているので、以下のことを積極的に取り入れて快適な大腸にしてもらいたい。

(1)日本食を見直そう。
脂肪の多い洋食ではなく、魚、海藻、野菜、豆類を中心にした食生活を心がける。

(2)食物繊維を1日20~25グラムは摂るようにしよう。
食物繊維には有害物質や余分なコレステロールなどを排泄してくれる効果がある。野菜や果物をはじめ、豆類、いも類、きのこ類、海藻類、こんにゃくなどに多く含まれている。

(3)腸内環境を善玉菌優位の状態にする。
ビフィズス菌入りなどのヨーグルトを積極的に摂取する。

(4)オリゴ糖を多く摂る。
オリゴ糖は、ごぼうやタマネギに多く含まれている糖質で、大腸のビフィズス菌など善玉菌のエサになる。