「弟を日本一にする」。イオングループ創業者・岡田卓也の実姉・小嶋千鶴子は、その言葉通り、家業の岡田屋呉服店を日本最大の流通企業に育てた。『イオンを創った女の仕事学校』(プレジデント社)の著者・東海友和氏は「小嶋は“お金儲け“という考えがまったくない経営者だった。そして、公私の区別にこだわった」という——。

軽トラで銀行へ行く「ふつうの田舎のおばあさん」

小嶋は質素倹約を旨とし、ふだんから伊勢木綿のスーツで、髪なども特に染めたりしないし、化粧などもしない。一見、ごくふつうの田舎のおばあさんである。

以前、小嶋の私設美術館パラミタミュージアム(現在は公益財団法人岡田文化財団)で、ともに作業をしていたとき、「東海くん、銀行へ行きたいんで連れていってくれんか?」と言われたことがある。

「いいですけど、私、軽トラですよ」と言ったら「それでかまわん」と、まったく体面を気にするふうもなく、いそいそと軽トラの助手席に乗り込んできた(そんな様子で銀行へ行き、何千万というお金を下ろすものだから、こちらのほうが気が引けるのだが……)。

日常の生活においても、家事全般の費用は「これでやりくりしてや」と前もってお手伝いさんに定額を渡し、特別な出費は別に予定をして自分なりにコントロールをしている。

小嶋も岡田もお金に関して身ぎれいである。必要以上の余分な報酬は採らないことで一貫している。自分の蓄財には無頓着で、贅沢ぜいたくをしない。