エイチ・アイ・エスが展開する「変なホテル」はロボットが宿泊客に対応している。一見非常識だ。だが実は、稼働率が高く、高収益を上げている。マーケティング戦略コンサルタントの永井孝尚氏は、「タブーや非常識を常識に変えることで、ヒット商品が生まれる。常識に違和感を覚えたら、それは大きなチャンスだ」と指摘する――。

※本稿は、永井孝尚『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』(PHP新書)の一部を再編集したものです。

写真=時事通信フォト
大阪市で開業したHISグループの「変なホテル」のフロント。恐竜型ロボットが出迎える=2019年1月30日、大阪市中央区

受付もルームサービスも掃除もロボットがする「変なホテル」

永井孝尚『売ってはいけない 売らなくても儲かる仕組みを科学する』(PHP新書)

ホテルをチェックアウトしようとしたら、フロントに大行列ができていた。10分ほど待ってやっと順番が来た。ルームキーとクレジットカードを渡すと、スタッフは「永井様ですね」と確認した後、忙しそうにパソコンを打ったり、書類を確認したりしている。時間にして5分間。チェックアウトで合計15分である。

「ホテルのサービスは、人が真心込めて丁寧に」というのは、常識だ。しかし、本当にその常識が正しいのかというと、疑問を感じることも多い。

これに比べて、エイチ・アイ・エスが展開する「変なホテル」は常識外れだ。チェックインからチェックアウトまで、人間のスタッフにはほとんど会わない。受付では恐竜や女性型ロボットが宿泊客を出迎える。ルームサービスや掃除など、ありとあらゆるサービスをロボットで自動化している。ちなみに、変なホテルは、2015年に「初めてロボットがスタッフとして働いたホテル」としてギネス認定された。