8倍もの生産性向上を成し遂げた
「ホテルだから、やはり人がおもてなしをしなければダメでしょう」
常識に囚われていると、こう思いがちだ。
変なホテルが目指すのは、究極の生産性向上と収益性である。エイチ・アイ・エスは2015年から2年間、ハウステンボスで変なホテルをパイロット営業した。その結果は、
・開業当初…スタッフ30名で72室を運営
・2年後……7名で144室運営
以上、「従業員はロボット」の変なホテルが成功を収めた理由」(現代ビジネス)より。
スタッフ一人当たり2.4室を担当していたのが、2年間で20.6室。なんと8倍もの生産性向上である。客室稼働率は9割。運営利益率は、通常のホテルは30%だが、倍近くになった。
2018年10月の決算で、エイチ・アイ・エスのホテル事業の総売上は120億円。営業利益は21億円。この決算では、今後は台湾・タイ・ベトナムなどの海外や他業態のホテルも含めて100店舗の展開を目指すということも発表された。
少子高齢化で働き手は減っていくので、人手不足は将来も解消しない。ならば、機械にできることは機械に任せたほうが、宿泊客を待たせず宿泊客のストレスも減る。ホテルスタッフは人間しかできないことに集中できる。一見常識外れの変なホテルは、常識に囚われずロジカルに考え抜いて生まれたのだ。そして、3.5星クラスの利便性が高いサービスを徹底無人化により提供し、結果として高収益を実現している。
新しい常識を創ると、ヒット商品が生まれる
これまでのホテルの常識は、「品質が高いサービスを提供するには、人のおもてなしが必要」ということだった。しかしこれをゼロから抜本的に見直して、ホテルを再定義しているのが「変なホテル」である。ちなみに、「変なホテル」の「変」には「変わり続ける」という意志が込められているという。
「常識」とは、過去にうまくいくことが証明された成功パターンだ。一見、常識を守ることは合理的に思える。しかし過去の成功パターンは、同じ方法でやっているライバルも多い。リスクは低く見えるが、過当競争に陥る。
さらに世の中も顧客も、常に変わり続けている。「成功パターン」と思っていた常識が、いつの間にか「失敗パターン」に変わっていることも多い。むしろ、あえて自分で常識を破り、新しい常識を創ることで、ヒット商品が生まれてくる。