大企業の社長がダメな理由

大企業の連続性、同質性を断ち切るにはガバナンス改革が必須です。なかでもトップ人事の見直しは避けて通れません。

中西宏明、冨山和彦(著)『社長の条件』(文藝春秋)

大企業の社長といえば、新卒一括採用で就職し、そのまま終身雇用、年功序列のなかで育った60歳以上の男性が典型です。社内外に敵をつくらない調整タイプが多数を占めてきました。

トップ候補にそういう典型タイプがいるのは構いません。問題は、ほかのタイプが選択肢にないことです。

女性、40代以下、外国人が大企業の社長になることはほとんどありません。転職してきた人、海外経験が豊富な人も、社内政治に弱いので少数派です。

本来は、破壊的イノベーションが起きた30年前から社長候補のダイバーシティに取り組むべきでした。現場の業務は連続性、同質性が高いほうが効率的な場合も少なくありません。しかしマネジメント層は、新しい大波がいつ襲ってきても対応できるように、幅広い多様な選択肢を準備しておくことが必要です。

闘争心を絶やさず、乱世を駆け抜けろ

経団連といえば、先ほど挙げた社長の典型モデルが集まっている組織です。その経団連が、いまやガバナンス改革に取り組み、30年の後れを取り戻そうとしています。

この改革に強い意欲を示している中西宏明会長は、日立製作所が7873億円もの赤字を計上した2009年に子会社から呼び戻されて社長に就任しました。そこからV字回復を達成したのは、コマツの坂根さんに通じます。

中西会長は2019年5月にリンパ腫で病気療養に入り、経団連の仕事をいったん離れたものの、会長代理を置かないまま3カ月半で復帰しました。中西会長のような経営者は、おそらくピンチに陥るとアドレナリンが出るのでしょう。「絶対に病気を治す」という闘争心は凄まじいものがありました。

グローバル市場が30年前の状況に戻ることはまずありません。令和のリーダー像は、乱世を好むタイプが有力であり、ほかにも多様なタイプを選択肢として準備しておくことが重要なのです。

撮影=西田香織
(構成=Top Communication)
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