予約も会話も要らない散髪屋がいいのに……

田中氏は大学を卒業後、不動産会社に営業として5年間勤務。飲食店経営や複数の企業の経営を経て、2018年2月にGMをオープンした。現在は2社の代表を務めるほか、他1社の取締役も兼務する。

提供=Barber the GM
GMの外看板

——業界未経験にも関わらず、なぜ理容室を始めたのですか。

これまでたくさんの散髪屋や美容室に行きましたが、自分が本当に行きたいと思う散髪屋がなかったからです。

予約が必要だったり、店員さんと話をしないといけなかったり、思う髪型にしてもらえなかったり。「散髪したいときに、今すぐ切ってほしい。話はしなくていいから、髪だけ切って早く帰りたい」という望みをかなえてくれるお店がありませんでした。

僕の求める散髪屋の本質は、「自分が思う通り、もしくはそれ以上の髪型にしてくれる」こと。その上で、“早くて安くて居心地がよくて、丁寧に散髪してくれる”というプラスアルファで求める部分も満たせるお店を作りたいと思いました。

とはいえ、業界未経験で分からないことばかりだったので、長年美容師として活躍し、自分で美容室も経営している業界のプロである友人に相談しました。

2人で話しているうちに、これからは理容室が伸びるだろうと意見が一致しました。

サイドを刈り上げるなら理容師が有利

最近、男性の多くは美容室に行っていますし、美容室も男性客を取り込もうとしています。しかし、なかなかうまくいっていません。実際、友人の美容室でも男性客はあまり増えず、女性客ばかりが増えている状況でした。その理由は、美容師と理容師の技術の違いです。

男性の髪型はあまりはやりがないとはいえ、ここ数年はサイドを刈り上げる髪型が人気です。刈り上げるためにはバリカンを使いますが、バリカンは使い方が難しい。理容師は学校でバリカンの使い方を習いますが、美容師は習わないんです。

そういった理由から、男性のカットに対しては理容師の方が技術的にも有利だし、男性の求める髪型を提供できるのではないかと思ったんです。

理容室をする前提で試算をしてみたら利益が出せる感覚もあったので、店を始めることにしました。