※本稿は、山田昌弘『結婚不要社会』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
女性の約7割が「結婚相手の収入」を重視している
今日の日本で、いったいどういう人が結婚しているのでしょうか。
結婚できる男性――女性が結婚相手に選ぶ男性――は「経済データが重要である」と言えます。つまり、職業が安定していて収入が高い人であればあるほど結婚しやすく、職業が不安定で収入が低い人であればあるほど結婚しにくい。これはいくつかの統計分析が示していますし、若者が結婚相手に求める条件といったアンケート調査の回答でも、女性は、近年ますます経済的な安定というものを重視しています。
たとえば、朝日新聞が2018年12月に行ったネット調査「未婚の若者の結婚観」(25~34歳の男女、約1000人)では、「結婚相手に譲れぬ条件」として、72%の女性が「収入」を挙げています。これに対して「収入」を条件に挙げる男性は29%でした(図表1)。
「相手に求める年収」という質問には、女性の63%が「400万円以上」と答えています。そして「関係ない」と答えた女性は19%、男性は64%です。
こうした男女の意識の差――女性は6~7割の人が収入重視、男性は2割くらいの人が収入重視――は、じつは十数年前から変わっていません。
「年収700万円以上」という現実離れしたハードル
女性月刊誌『JJ』(2019年2月号)の調査「JJ世代の結婚白書2019」はもっと率直です。結婚相手の男性の年収は700万円以上(1000万円以上含む)と答えた女性が60%近くいて、年収を気にしない女性は約8%にしか過ぎません。JJ読者には夢見る女性がまだ多いということなのでしょうが、それにしても700万円以上というのは、若い男性にとってはあまりにも現実離れした高いハードルでしょう。
もちろん、いままで女性が男性の経済データを重視しなかったわけではありません。そうではなくて、経済データを重視せざるを得ない状況ができてしまったということです。
30年前の被雇用者は、経済的に安定していました。ところがいまは、経済的に不安定な若い男性が増えているので、経済データを結婚相手の条件に挙げる女性が増えてきたわけです。
経済データほどではないにしろ、容姿と身長も男性が選別されるデータになっています。拙著『モテる構造―男と女の社会学』(ちくま新書/2016年)に詳しく書きましたが、それは、じつは子どものためなのです。娘だったらルックスがいいほうがいいし、息子だったら身長が高いほうがいいので、自分のためというよりもやがて生まれる子どものために、男性は経済データだけでなく、外見つまりは遺伝子のデータでも選別される傾向が強くなっています。