でも、そんなときに入ってきた1人のスタッフが、店の雰囲気をガラッと変えてくれました。彼は店のコンセプトに誰よりも共感し、「この店もっといけますよ! お客さまは絶対に来てくれます」と言ってくれて。オープニングスタッフが全員辞めていくなか、人が足りない時は1人でも営業を続け、来てくれたお客さまに真摯しんしに対応し、リピーターを増やしていってくれました。

他業界にいたからこそ経験が生きている

そんな姿を見て、彼がいてくれる間は店を続けようと決めたんです。その後に入ってくれたスタッフたちも同じように誠実に熱心に仕事をしてくれ、そこから店が上向きはじめました。

「全ては人だな」と思いましたね。なので、会社の利益は後回しにしても、彼らに最大限還元しようと思っています。

——どの業界・職種にも共通する真理ですね。来店のきっかけづくりや集客方法について教えてください。

ご来店いただくきっかけは、ウェブでの集客が50%、通りがかりが40%、ちらしやご紹介が10%です。集客方法は、Google検索・Facebook・Instagram・看板。ホットペッパーなどの美容系広告は利用していません。

ウェブでの集客は、無料のGoogle検索と有料広告に分かれます。

「バーバー 本町」「散髪 本町」などで検索するとほぼ1位に出てくるので、そこからお店のことを知ったという方が多いですね。上位表示させることができた理由は、これまでの仕事で培ったSEO(検索エンジン最適化)の知識や経験を生かし、基本的な対策をしているからです。

とはいえ、特別なことはしていないので、競合のお店の多くがそういった知識や経験をあまり持っていないのかもしれません。

有料広告はリスティング広告やSNS広告を社内で運用しています。一般的な理美容室の広告宣伝費は売上比率で10%程度と言われていますが、当社は約3~4%。店舗数が増えても、金額はほとんど変わらずに集客できているので、今後もこの方針を続けていくつもりです。

客とスタッフ双方の利益を追求した結果

提供=Barber the GM
会計時の様子。万が一決済できない場合は、振り込み先を書いて渡している

——GMは「会計はキャッシュレス決済のみ」や「予約制度なし」という、理美容業界では珍しい取り組みをしていますね。なぜ決済方法を限定したのですか。

最大の理由は、業務委託であるスタッフの仕事を減らしたいと思ったからです。

現金を取り扱うと、レジ業務や締め作業など、彼らの仕事が増えます。彼らは髪を切るプロなので、僕としては一番大事な「お客さまの髪を切る」という仕事をして、最低限の掃除をしたら早く帰ってほしいと思っているんです。その思いを姿勢として表したのが、キャッシュレスです。