関東の3自治体がトップ3を占めた
プレジデントオンラインでは、今回、総務省が発表した2017年(平成29年)の「地方公務員給与実態調査」に基づいて、自治体ごとの平均年収を推計した。対象は「一般行政職」で、諸手当(寒冷地手当を除く)を含む平均給与月額(4月分)に、期末手当と勤勉手当を加えて算出した。なお、一般行政職とは、教育職や警官といった専門職ではない、いわゆる役所で勤務する公務員を指す言葉だ。
第1回は、全国市区町村(1721自治体。全国20の政令指定都市は対象外)の「トップ500」をお届けする。1位は神奈川県厚木市、2位は東京都杉並区、3位は東京都三鷹市と、関東の3自治体がトップ3を占めた。なお前回のランキングでは、九州の3自治体がトップ3だった。これは2016年4月に発生した熊本地震の対応で、時間外勤務や休日勤務が増えたことが要因だった。今回はそうした特殊要因がなくなった順位となったといえる。
杉並区は超過勤務縮減の取り組みで減少
1位の厚木市は、神奈川県のほぼ中央にあり、東京都心までは急行電車で約1時間。人口は約22万5000人(2018年6月1日現在)で、都心通勤者のベッドタウンとして多くの子育て世帯が居住している。厚木市役所に務める一般行政職は1009人(2017年4月1日現在)だ。
厚木市は前回のランキングでも5位にランクインし、平均年収は749.9万円と高かった。今回は、そこからさらに1.2万円上昇して1位となっている。もともと年収が高い上に、さらに増えたのはなぜなのか。厚木市役所は、「2017年度の人事院勧告により、勤勉手当が0.1月分引き上げられたことと、職員の平均年齢の高さ、それに国の基準による地域手当が比較的高いことによるものだと考えられます」(厚木市役所職員課)と説明している。なお「地域手当」とは、各地域の民間企業の賃金水準との調整を目指して支払われる手当を指す。
2位は東京都杉並区だった。前回は4位だったので、2ランクアップとなる。杉並区は東京都23区のうち西部に位置する。JR中央線沿線(高円寺・阿佐ヶ谷・荻窪など)の地域をもち、約56万8300人が住む(2018年6月1日現在)。杉並区役所に務める一般行政職は2912人(2017年4月1日現在)だ。
今回、杉並区の平均年収は742.8万円、平均年齢は44.0歳だった。前回は755.3万円、43.8歳だったので、平均年齢が上がっているにもかかわらず、年収は12万円ほど下がっている。地方公務員の給与は、原則として年齢に応じて年収が上がる仕組みとなっているため、この結果は奇妙に思える。
杉並区役所は「杉並区では2016年から全庁的に超過勤務の縮減に取り組んでおり、その成果が現れて、2017年は超過勤務の総時間数が減少しました。それによって支給額も減少しています。また、東京23区共通で住居手当の制度改正による経過措置(月額2000円支給)が2016年度で終了したことも影響しています」(杉並区役所人事課)と説明している。
なお、ランキングの右端には「ラスパイレス指数」を記した。これは国家公務員を100とした場合の、各自治体の給与水準を示すものだ。2012年以前は全国市区町村の平均値が100を上回り、地方が国より高い状態が続いていたが、東日本大震災の復興財源を目的に国からの給与削減要請があったことから、年々低下。2017年は16年より0.5ポイント高い98.6ポイントとなった。