カースト制は差別である

すると、どうなる。実際に、瞑想(パフォーマンス)を実行するしかない。

瞑想は、労働ではない。真理に接近するパフォーマンスは、訓練が必要で、時間もエネルギーもかかる。選ばれたごく一部の、特権階級のひとしかできない。これが、バラモンだ。

バラモンは、サンスクリットで書かれた本を、たくさん読む。神々の祭祀も、行う。けれども本当は、「真理に接近できる特権をもった人びと」のことなのだ。

そうでない人びとは、この世界に必要な、さまざまな業務を分担する。政治・軍事を分担するのが、クシャトリア、ビジネス全般を担当するのが、ヴァイシャ……、という具合に。彼らは、バラモンより、地位が低い。「真理にアクセスしたければ、輪廻してバラモンに生まれるのを待ちなさい」である。

カースト制は、差別である。社会的威信(プライド)が、不均等に配分されている。下のほうに位置づけられたら、生きる気力が失せてしまいそうだ。

巨大なビジネスチャンスを見逃すな

これに抗議の声をあげたのが、仏教である。

ゴータマ青年はクシャトリヤの生まれ。宗教活動をしに修行の旅に出るのは、カースト制のルール違反だ。ゴータマ青年は、命懸けで、

(d)「カーストに関係なく、誰でも真理にアクセスできる」

と主張したかったのである。

努力の甲斐かいあって、覚り(さとり)をえた。ゴータマは、覚った人(ブッダ)となった。弟子を集めて、教団(サンガ)をつくった。どんなカーストからも参加できる。同じ服を着て、共同生活をする。托鉢たくはつしてもらった食べ物を、一緒に食べる。人間として平等。差別の厳しいカースト社会の反対の、理想の空間がそこにある。

仏教は、これみよがしの、アンチ・カースト運動である。ブッダがなにを覚ったかは、この際、二の次である。

仏教のやり方を、4行モデルにまとめてみよう。

仏教の人びとの、行動様式
(1)まず自己主張する。
(2)相手も自己主張している。
(3)このままだと、紛争になる。
(4)真理があるので、大丈夫。

インドから生まれて、インドを食い破る可能性を秘めた仏教。仏教とヒンドゥー教、そしてイスラム教がどういう三つ巴の関係を繰り広げていくかは、『4行でわかる世界の文明』をお読みください。

仏教は結局、インドから消えてしまった。

インドには代わりに、イスラム教が入ってきて、併存するようになった。

イギリスの植民地時代に、英語が共通語となった。IT革命になって、新しい産業がインドに育ち、カースト制がゆるみ始めた。これからは、インドの時代である。

インドの巨大なビジネスチャンスを、指をくわえて見逃さないよう、さあ準備を始めよう。

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